WBA・WBCヘビー級2大タイトルマッチ展望=ボクシング
WBC世界ヘビー級タイトルマッチ
衰えを見せないWBAヘビー級王者ビタリ・クリチコ、元チームメイトとの因縁対決を制するか 【(C)NAOKI FUKUDA】
元チーム・メイト同士の因縁対決
クリチコの強打が炸裂か
クリチコは昨秋、実に4年ぶりの戦線復帰を果たし、いきなりその試合でサミュエル・ピーター(ナイジェリア/米)を圧倒、8回終了TKO勝ちでWBC王座に返り咲いた。この夏(7月)で38歳になるが、ピーター戦を見るかぎり衰えは感じられなかった。4年の休養がプラスに作用しているとみていいだろう。身長202センチ、リーチ203センチという大柄な選手だ。大別すれば右ボクサーファイターというカテゴリーに入るのかもしれないが、そのボクシングはあくまでも攻撃的で、極めてファイター型に近いタイプといえるだろう。
挑戦者のゴメスはキューバ生まれの35歳。アマチュアで170戦158勝12敗という戦績を残しているサウスポーの技巧派強打者だ。158勝の中にはビタリの弟ウラディミール・クリチコ(現IBF&WBO王者)にポイント勝ちした星も含まれている。プロ入り後の98年2月にはWBC世界クルーザー級王座を獲得し、10度の防衛を記録。ヘビー級に転向後、ヤンキ・ディアス(キューバ)に不覚をとったのが過去唯一の黒星だ。クルーザー級時代は細身だったが、いまは体もヘビー級に馴染んでいるようだ。
この両者には数々の因縁がある。ゴメスがアマ時代にウラディミール・クリチコに勝っているだけでなく、かつてクリチコ兄弟とゴメスは同じウニベルスム傘下の選手として同じジムでトレーニングしたこともあるのだ。クリチコ兄弟がフリッツ・シュドネック・トレーナーに師事、ゴメスがミハエル・ティム・トレーナーに師事していた関係でスパーリング経験はないようだが、「8年間も口をきいたことがなかった」(ビタリ)というのだから、両者の溝は浅くないはずだ。いまはクリチコ兄弟が独立してK−2プロモーションを興し、ゴメスはウニベルスム傘下に留まっており、そのあたりの対抗意識も強いものがあるようだ。
両者の戦力を比較するかぎりクリチコ有利は不動といえよう。ゴメスにはヘビー級では希少なサウスポーというアドバンテージがあるが、クリチコはクリス・バード(米)戦や5年前のコリー・サンダース(南ア)戦などで試運転は済んでいる。ゴメスがサイドに動きながら細かく攻めてくることも考えられるが、それでチャンピオンが大きなトラブルに陥るとは考えにくい。
両者の耐久力の差も考えると、中盤あたりにヤマが訪れるのではないだろうか。クリチコの右が炸裂するシーンが見られるはずだ。
WBA:ニコライ・ワルーエフ(ロシア)
:ルスラン・チャガエフ(ウズベキスタン)
WBC:ビタリ・クリチコ(ウクライナ/米)
IBF:ウラディミール・クリチコ(ウクライナ/米)
WBO:ウラディミール・クリチコ(ウクライナ/米)
一時の混乱状態を抜け、少し整理されてきた。現在はクリチコ兄弟が戦線を引っ張り、ワルーエフ、チャガエフが脇を固めるといった構図だ。相変わらず旧ソ連勢がトップを占めているが、上位ランカーたちの顔ぶれを見るかぎり、この状態はしばらく続くのではないだろうか。
WBAはチャガエフ対カール・デイビス・ドルモンド(コスタリカ)の勝者とワルーエフの対決を義務付けており、その勝ち残りがジョン・ルイス(米)を迎え撃つ予定だ。
また、ビタリ・クリチコ対ゴメスの勝者は元王者のオレグ・マスカエフ(カザフスタン)との防衛戦が有力視される。
2団体の王座を保持するウラディミール・クリチコはデビッド・ヘイ(英)との対戦が決まりかけたが、いまは交渉が保留状態になっているようだ。
WBA世界ヘビー級タイトルマッチ
アキレス腱負傷から復帰のチャガエフ
挑戦者は26戦全勝(20KO)
チャガエフは昨年7月に前王者ニコライ・ワルーエフ(ロシア)を相手に防衛戦を行うはずだったが、決戦を前にアキレス腱を負傷したため、やむなく試合をキャンセル。WBAはチャガエフに「休養チャンピオン」という肩書きを与えて、ワルーエフとジョン・ルイス(米)で新チャンピオン決定戦を決行。勝ったワルーエフをチャンピオンとして認定した。その一方、傷の癒えたチャガエフが戦線復帰するのに際し、WBAはこちらもチャンピオンであるという認識を示し、今回のドルモンド戦を防衛戦として認定した。これが今回の試合の顛末である。
この試合で戦線復帰を果たすチャガエフはウズベキスタン国籍を持つ30歳のサウスポー。アマ時代には96年のアトランタ、2000年のシドニーと2大会連続でオリンピックに出場した実績を持つ。プロでは07年にワルーエフを攻略してWBA王座を獲得。初防衛戦をこなしたのちブランクをつくることとなり、これが13カ月ぶりの実戦となる。パワーは平均的だが、アマ出身者らしく距離やタイミングの取り方に卓抜した巧さがある。
挑戦者のドルモンドは05年2月に30歳でプロデビューした34歳。ボクシングの世界では珍しい中米コスタリカの出身だ。世界的強豪との対戦は少ないが、26戦全勝(20KO)の戦績はみごとだ。
しかし、ドルモンドは自国を出て戦った経験が一度しかなく、相手のホームに乗り込んでの試合は少々荷が重いかもしれない。チャガエフがサイドに回りながらドルモンドの死角を突いて左をヒットしていく可能性が高い。賭け率は10対1(チャガエフ有利)と出ている。
この際、チャガエフが勝った後に組まれるであろうワルーエフ戦、さらにクリチコ兄弟との比較をしながら見るのも一興だろう。
怒涛のビッグマッチ タイムリーオンエア!
ヘビー級2大タイトルマッチ!
<放映日時>
191ch:3月23日(月)よる8:00
(再)191ch:3月27日(金)午前4:40、193ch:3月27日(金)午後0:00
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