プレ五輪で浮き彫りになった、中国の観戦マナー
各競技場が競う「観戦マナーコンクール」
観戦マナーの向上に努める中国だが、テニス会場では、プレー中に立ち歩くなどのマナー違反が見受けられる場面も多々…… 【朝倉浩之】
テニスでは試合の中断も
もちろん、このテニス場でも、さまざまな働きかけをしていた。大会前、あらかじめインターネットの公式サイトで、テニスの観戦マナーを記した「観賽(観戦)指南」を公開していたし、当日の会場でも『プレーの始まる直前には声をかけない』、『むやみに立ち歩かない』、『中国以外の国の選手に対しても温かい声援を送ろう』といった場内アナウンスをしていた。また、不釣合いなほど多くのボランティアを観客席の各所に配置し、プレー中に入退場しようとする人や携帯電話で会話をしている観客に注意を促していた。だが、大学生に過ぎない彼らでは、とても手に負えないというのが正直なところだった。
改善に向けて市民講座を実施
実は、こういった『市民講座』の目的は、単にスポーツ観戦のマナーアップだけではない。五輪開催を契機に、中国政府は市民の生活マナーそのものを改善したいと考えている。列車やバスで並ばない、赤信号を守らない、つばや痰(たん)を吐くなど国際的に芳しくないイメージを改善することが、北京五輪の目的の一つというわけだ。そのための手段の一つが、競技場での観戦マナー向上の呼びかけである。
だが、今年行われたプレ五輪の様子を見る限り、その道のりはまだまだ遠そうだ。スポーツを『国威発揚の道具』として使ってきた中国が、市民も巻き込んだ本当の意味での「スポーツ王国」となるためには、“見る側の成熟”がまだ必要である。来年やってくる世界中のアスリートを北京市民が「ホスト」として、いかに迎えるか……今後の中国スポーツの発展とも関わる大きな課題といえよう。
<了>
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