日本が発信する国際映像=世界陸上の舞台裏vol.1
テレビ機材も暑さ対策 番組制作面で課題も
暑さをしのぐためにカメラにかけられた簾 【スポーツナビ】
競技場内には、“超人”たちの常人離れした走りや跳躍を追うために、多くのテレビカメラが設置されている。トラックの外側には地面と平行に高速移動できるカメラがあり、空中からは、「ケーブルカム」と呼ばれる、四方からワイヤーでつるされたカメラが、頭上からの映像を取っている。
ただ、そういった高度な技術が駆使されているカメラよりも目に付くのが、多くのカメラにかけられた茶色い物体である。近づいて見てみると、それはどうやら簾(すだれ)のようだ。でもいったいなぜ?
その疑問に答えてくれたのは、TBSのマラソン担当チーフディレクターを務める佐藤慶太氏。
「あの簾は暑さよけです。カメラは精密機器ですから、暑さに弱いんです。大阪の夏は暑いですから、機器を守るのも大変なんです」
大阪の暑さは、競技面での影響が心配されているが、テレビ番組の制作面でも影響を及ぼしている。番組制作に使われる機器のいくつかは、すでにこの暑さのために故障してしまったという。
その影響は、大会初日の男子マラソンで出た。本来は、選手の走行距離が画面に表示されるのだが、機器の故障により、表示されないという事件が起こったのだ。「女子マラソンまでには改善されます」と佐藤氏。
暑さ対策。それは選手だけでなく、番組制作側にとっても一つのテーマである。
国際映像を制作するTBSが担う役割
日本中の系列各局から集結した中継車 【スポーツナビ】
TBSは、以前にもバレーボールなどでHBを務めたことはあるが、「ここまで大規模なものを一手で受けるのは初めて」(佐藤氏)だという。
HBは、世界中に配信される映像を作る非常に重要な役割を担う。地元・日本での開催であろうとも簡単に指名されるわけではない。「実績のない放送局がHBに指名されるのは光栄なこと」と佐藤氏。現に、来年の北京五輪でHBを務めるのは、中国の放送局ではなく、欧州の放送局であるということからも、陸上中継におけるTBSへの信頼がいかに高かったのかがうかがえる。
今回、国際映像を作るために動員されているスタッフの数は、技術スタッフだけで330人、ディレクターなどを含めると総勢でおおよそ600人。カメラの数はなんと100台以上にも上る。
この数字がいまいちピンとこない方も、野球やサッカーの日本代表戦で使うカメラの数が20台弱、技術スタッフが70〜80人程度という数字と比べていただければ、いかに膨大なものかお分かりいただけると思う。
もちろん、これだけの人数を一局だけで担うのは不可能。今大会では、系列局である、大阪のMBSや広島のRCCなどからもスタッフが集まって、この一大プロジェクトに臨んでいるのである。