バレーボール日本代表・女子コメント=W杯ポーランド戦

田中夕子
 上位3チームに北京五輪出場権が与えられるバレーボールのワールドカップ(W杯)女子大会第7日が10日、札幌・きたえーるなどで行われ、日本は3−2のフルセットでポーランドに逆転勝利を収め、通算成績を5勝2敗とした。
 以下は、監督・選手のコメント。

柳本監督の“喝”にプレーで応えた高橋 【坂本清】

■高橋みゆき「ミーティングで喝を入れられた」

 必死だった。(イタリアでチームメートだった)スコブロニスカがいたので負けたくなかった。今朝のミーティングで監督から喝を入れられた。死に物狂いで初心に戻るという意味で、いいミーティングをしてもらった。私やテンさん(竹下)の軸がしっかりしないとチームはまとまっていかないと受け取った。
 みんながフォローしてくれたり、声を出して(ブロックやレシーブが)空いているところを言ってくれたので、周りに助けられた中で思い切りプレーすることができた。一人の力ではないと思うし、チーム一丸となって戦えたのが良かった。
(スパイクを打つ際の)自分のポイントが今までずれていたけれど、少しずつ(自分のポイントが)見えてきたと思った。セリエAでプレーしていたときも、ヨーロッパのチームはどこも似たような感じだったので、ポーランドだけが特別に高いわけではない。苦しいところで上がってくるポジションなので、そこで決めるのは特別ではない。サーブカットで乱されても、二段トスを決めてくれるとサーブカットをする方としても助かるので、自分も決めたかったし、決めてくれてありがたかった。今日の勝ちを生かせるように今後も戦いたい。


■竹下佳江「チーム全体の勝利だった」

 フルセットで勝ち切れて良かった。苦しい場面でセンター線が切り込み、サイドの選手が決めてくれた。チーム全体での勝利だと思う。一つ一つに集中して戦い切れたのが勝因だと思うので、明日も勝ち切って名古屋での3連戦につなげたい。
 第4セットに木村へトスを連続して挙げたのは、序盤で木村が決め切っていたことが大きかった。彼女が乗ってきていると感じていたので、(木村に)トスを集めることによってチームがまた走り始めるという形をつくるために木村にトスを挙げた。

フルセットの接戦を制し、荒木(右)と喜ぶ栗原 【坂本清】

■栗原恵「連続失点を乗り越えたのが大きい」

 連続失点をしたときに「また、セルビア戦の時のようにならないかな」とよぎったが、そこをみんなで耐えて乗り越えることができたのが大きかった。厳しい展開になるのは最初から予想できていた。最後まであきらめることなく、みんながコートの中を向いていたと思うので、そこでいいつながりができてきたと思う。
 ワールドグランプリでは、ケガでポーランド戦は欠場したので最初は探りながらプレーしていたが、そのなかでも攻めることはできたと思う。相手がどういう攻撃をしてくるか、どれほどの高さかが分からなかったが、徐々に対応していくことができた。
 どのセットも最後まで競っていたので、気が抜ける展開ではなかった。厳しかった。相手はグリンカ(7番)とスコブロニスカ(1番)にボールが集中しているのが分かっていても、止め切れない部分があったので苦しかった。
 最後に凡ミスをしてしまったので、勝った瞬間は「良かった」と思った。この勝利が次につながるように、明日の試合をまず頑張りたい。

MIPに選出される活躍で日本の逆転勝利に貢献した木村 【坂本清】

■木村沙織「トスが多く上がったので気持ちを入れて打った」

 負けることができない中で、あるものをすべて出し切ろうと思ってプレーした。サーブカットは相手に狙われていてガタガタしていたけれど、テンさん(竹下)がカバーしてくれて、メグさん(栗原)が決めてくれたので心強かった。
 4セット目はトスが多く上がってきたので、気持ちを入れてスパイクを打っていた。ワールドグランプリでポーランドと対戦したときはシャットされてばかりだったので、ブロックにだけ意識があったが、今日は高さがあってもブロックの間が開いていた。日本もブロックの本数があったので負けていなかったと思う。ブロックがあってもフォローが入ってくれていたので安心して思い切り打った。
 最終セットに入ったときは、15点マッチで負けられない状況なので、先に走ったほうが勝ちだと思い、出だしに集中して勝ちに行った。ここ何試合、ずっとメグさんやシンさん(高橋)に苦しい状態でトスが上がっていたので、そこで自分が何本か決めていれば楽になるのではないかと思った。今までの試合の中で自分のパフォーマンスとしては一番良かったのではないか。

こん身のガッツポーズを見せた柳本監督 【坂本清】

■柳本晶一監督「一人一人が自分の持ち場をこなした」

 ワールドカップに入るにあたり、高さのあるヨーロッパ勢に対応する練習をしてきたが、ここまで結果が出なかった。それが3回目の今日の対戦でようやくつながった。苦しい場面もあったが、最後まで選手が自分たちを信じて辛抱したのが今日の勝因ではないか。やればできると選手たちが確認できたことが勝利につながった。
 全体のバランスが良かった。これまではセンターが機能していても、サイドが機能しないことや、チーム内にひずみがあった気がする。今日は木村が支える場面、高橋が支える場面、苦しい場面で最後の栗原が打つ場面があり、さらに竹下がうまくセンターを機能させていた。一人一人が自分の持ち場をこなした結果ではないか。
 1、2セットが終わった時点でAカット(セッターの頭上にボールが返球され、速攻もバックアタックもすべての攻撃ができるボール)は日本の方が上回っていた。でもそれで切れていなかった。サーブの効果を高めようという狙いも決まり、サーブの効果も高く、ポーランドはCカット(セッターに返球されず2段トスになるボール)が多かったが、そこでバックスパイクも含め40%ぐらいのパーセンテージで決められていた。そこに問題があるのではないかと思い、第4セット以降はブロックのつき方やボール回しについて指示した。
 竹下、高橋、私の三位一体でここまでチームを支えてきた自負はある。だが、勝負ごとは少し歯車が狂って自信が揺らいだり、プレッシャーがかかってうまくいかないことがある。そこでもう一回、竹下、高橋だからこそここまでできたものを確認した。2人は挫折(ざせつ)を経験しながら「小さくても世界と戦える」ということを示してきたので、もう一度自信を持ちなさいと今朝のミーティングで伝えた。
 札幌のファンや、全国のファンの方々から後押ししてもらって、勇気づけられているし、感謝しているので、こういった形で勝ちにつなげられて少しでも恩返しできればうれしい。

<了>
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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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