萩原智子の水泳マニア!〜男子編〜=自由形短距離、中長距離

萩原智子

「北島は自己ベスト更新を。山下とのダブル表彰台も期待」

男子平泳ぎ代表の北島康介 【Photo:中西祐介/アフロスポーツ】

男子平泳ぎ  北島康介、木村太輔、山下誠

 エースは北島選手ですね。
 北島選手は、とにかくここ最近出ていないベストタイムの更新をしたいと言っています。「できると思う」とも言っていますし、楽しみにしています。平井(伯昌)コーチも練習を見て、久々にワクワクすると言っています。
 (選手経験のある)私たちからすると、毎年、世界でメダルを取り続けることはすごいという感覚なのです。(世間的には)やはり五輪での金メダル二つというイメージがあるので、銀メダルでは“負けた”というイメージになってしまう。でも、五輪で二つも金メダルを取ったら、普通はモチベーションが下がるのが自然なのだと思うのです。次は何をしたらいいのか……。北島選手もそれで数年悩んできて、悩みながら練習をしていることで体調も崩し、体も故障してしまいました。
 でも去年のパンパシフィック選手権で、隣で泳いでいたブレンダン・ハンセン選手(米国)が世界新を出して変わりました。それが大きな刺激になったようです。平井コーチもあれから変わったと言っています。顔つきが全然違いますし、目が違います。(本人も)目指すものが決まって、そのスタートラインに立てたかなと言っていました。北京五輪に向けてはベストタイム更新をとにかく目標にしていますね。結果はそれでついてくると思います。勝負の世界に勝った負けたはつきものですが、応援してあげたいです。

 北島選手本人は「自己ベストを出さないと前に進めない」と話しています。ここ最近は自己ベストを出していないので、今回は北京五輪で戦えるところに戻れるように勝負したいと言っています。
 そういう意味で北京に向けて、いろんな勝負をしてくると言っています。レース展開も今回はいろいろ試すと言っていますし。ただ今回は、(北島は)タイムを出したいと言っているので、積極的に前半からいくのではないかと私は思っています。テーマは高速勝負と去年から言っていますし、スピードの練習はしてきているみたいなので楽しみです。

男子平泳ぎ代表の木村大輔 【Photo:北村大樹/アフロスポーツ】

 山下選手は50mと100mに出場します。(100mの)ベストタイムは1分00秒7という好タイムを持っていて、ランキング(※2006年12位)から見ても決勝には残れる位置にいます。タッチの差で順位が変わるので、順調にいってタッチさえあえば、メダルを狙えないことはないのです。北島選手とダブル表彰台ということも可能です。
 レース展開は、後半、一気に追い上げるタイプ。追い上げるときピッチが上がる様子に、すごく迫力がある選手です。北島選手と一緒に決勝で戦ってほしいです。

 (木村選手について)彼も後半型の選手です。200mのうち、前半100mのターン時に、「大丈夫かな?」と心配になるくらい(上位から離れている)なのです。でもいつのまにか(上位に)上がってきている選手ですごく面白いです。
 前回大会では、今村(元気)選手が200mで銅メダルを獲得したのですが、今村選手以上に涙を流したのが木村選手でした。ものすごく友だち思い。切磋琢磨(せっさたくま)したいし、みんなと一緒に平泳ぎを盛り上げたいと思っている選手です。ムードメーカーというか、すごく空気を明るくしてくれる選手です。

「エースは森田。山口の奮闘にも期待」

男子背泳ぎ代表の山口雅文 【Photo:北村大樹/アフロスポーツ】

男子背泳ぎ 森田智己、山口雅文、古賀淳也

 (50m、100mの日本記録保持者)森田選手がエースです。
 またわたしとしては、中央大学の山口(雅文)選手に注目しています。山口選手の泳ぎを大学選手権で初めて見て、その泳ぎにすごくほれぼれしました。わたしは体が大きかったので、体が大きい選手に注目してしまうのですが、(山口は)足のサイズが30センチあったりして、(自由形の)細川選手よりも大きいくらいです。去年おととしと日本代表に入っているのですが、世界大会では体調を崩して、なかなか結果を残せない、悔しい思いをしてきました。しかし、今年に入ってすごく充実した練習ができています。1月に神戸であった長水路の試合で、久々に彼の会心の笑顔を見ましたし、「これでもう大丈夫です」という言葉を聞けたので安心しています。
 森田選手を目標としてやっていますが、わたしは山口選手は本当に今からの選手だと思っています。
 日本人選手が1種目で二人決勝に残れることは少ないのですが、森田選手と山口選手で(100mと200mの)決勝の舞台に立ってもらって、(互いの力を)高めあってほしいです。

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著者プロフィール

2000年シドニー五輪200メートル背泳ぎ4位入賞。「ハギトモ」の愛称で親しまれ、現在でも4×100メートルフリーリレー、100メートル個人メドレー短水路の日本記録を保持しているオールラウンドスイマー。現在は、山梨学院カレッジスポーツセンター研究員を務めるかたわら、水泳解説や水泳指導のため、全国を駆け回る日々を続けている

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