萩原智子の水泳マニア!〜男子編〜=自由形短距離、中長距離

萩原智子

「メダルに近い種目、200m」

男子バタフライ代表の山本貴司 【Photo:築田純/アフロスポーツ】

男子バタフライ 松田丈志、柴田隆一、山本貴司、高安亮

 200mバタフライは本当にメダルに近い種目の一つです。山本選手という大先輩に勝って日本代表権を獲得しているので、自信をしっかりと持って頑張ってもらいたいです。
 山本選手がよく「今のバタフライの男子はレース展開が全員違うから面白いですよ」とアピールをしています。「柴田は前半からかっとばすし、ぼくはそれを追いかけるし、丈志は丈志で追い込みがあるし、本当に目がはなせません」なんて。本当にそのとおりです。

 松田選手と柴田選手についてですが、絶対に決勝に出られます! (前回の)モントリオールのときも二人一緒に(決勝に)出て、松田選手が銀メダルで、柴田選手が5位。そういう意味でも本当に注目ですね。
 それから松田選手には、200mバタフライの世界記録保持者、マイケル・フェルプス(米国)選手の隣で残ってもらいたいです。フェルプス選手が真ん中の4コース(※決勝進出タイム1位の選手が4コースに入る)で、4コースと隣り合う3、5コースで松田選手が泳げれば、追いかける松田選手にとっては、フェルプス選手の存在が見えます! 最高のレース展開になりますよ! フェルプス選手は(前回大会で)200mバタフライに出ていなかったのです。フェルプス選手が出ていないレースで、この二人が(決勝メンバーに)入っていたので、今度こそ世界大会でフェルプス選手と戦いたいという気持ちがあります。

 山本選手ですが、出場する100mバタフライという種目はとっても難しい種目です。少しの失敗がコンマ何秒の違いを生みます。そして、そのコンマ何秒の間に10人くらいの選手たちがひしめき合っています。ちょっとした失敗で、決勝に残れないということがありえます。その点については、もう十分に経験にされているベテラン選手なので、心配はないです。
 去年は8月のパンパシフィック選手権に出ましたが、今回のような全世界の大会は復帰して初めてなので、「『また山本貴司が帰ってきたぞ』と世界にアピールしたい」と山本選手は言っています。周りの若い選手たちが「どうしてこんなに練習を頑張れるの」と思うくらい、高地トレーニングでかなり追い込んできて、いい練習ができたようです。

 (ブランクからの代表復帰について)引退をした私から言わせると、こんな短期間のうちに、世界で戦えるまで戻せることは、すごいことです。
 いったんストップして、もう一度立て直していくというのがどれだけ大変なことかは分かっているので、だからこそ尊敬します。復帰したその年に代表入りしてますから、やはり努力の人です。
 (昨年の日本選手権のインタビューで)「28歳まだまだ頑張りますよ」って言っていました(笑)。今は代表の年齢が上がってきているけども、やはり中心の選手です。今回もキャプテンを任されているので、うまくまとめてくれるでしょう!

男子自由形、バタフライ代表の松田丈志 【Photo:築田純/アフロスポーツ】

 松田選手は、前回大会の200mバタフライでメダルを獲得しました。バタフライの場合は国内で代表になることが大変なのです。日本でトップに立てば世界でメダル圏内! すごく国内レベルが高いです。アテネ五輪で銀メダルを取った山本選手さえも代表に入れないほどのレベルになっているので、(その状況で)代表権をずっと取り続ける強さを持っています。
 また、松田選手の場合は、自由形長距離の場合もそうなのですが、後半勝負のレーススタイルです。でも最近は前半からいかないと、世界で戦えない! と話しています。前半から積極的に飛び出して、持ち味の後半勝負が生かせるようなレーススタイルを今回は目標としています。そのために、スピード練習をこの冬かなり積んできたので、新しいレース展開を見せてくれるのではないかと、楽しみにしています。

「最下位から1位に!? 最後まで見逃せない種目」

男子個人メドレー  佐野秀匡、高桑健、谷口晋矢

 個人メドレーはそれぞれの良さを見られる競技です。だからわたしはすごく個人メドレーが好きです。その人のレース展開、得意不得意がぱっと見て分かってしまう種目です。最初のバタフライでは最下位だった選手が、背泳ぎになったらトップになったりする。そんなことがたくさんあるので、最後まで見逃せないですね。

 まず、柴田亜衣選手のところ(鹿屋体育大)で一緒に練習をしてきているのが高桑選手です。柴田選手の活躍から、刺激を受けて、一気に伸びた選手です。「柴田先輩が世界と戦っているので僕も戦いたい」と、柴田選手の金メダルから、世界を意識する姿勢になりました。“亜衣ちゃん効果”っていうと、柴田選手がよく怒るのですが(笑)。でも柴田選手の影響は本当に大きいのです。
 個人メドレーの順番は、バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、自由形なのですが、高桑選手は後半の平泳ぎと自由形に絶対的な強さをもっている選手なので、後半がすごく重要な個人メドレーのなかではすごく強みを持っています。

 逆に佐野選手は前半型なので、高桑選手のスタイルとはまったく逆なのです。佐野選手はバタフライ、背泳ぎが得意で、(前半は)いつも体二つ分くらいリードし、会場を沸かします! 佐野選手にとっては平泳ぎが苦手でキーポイントなのですが、ここ最近はそれを克服する練習をしてきているので、だいぶ自信になっています。前回大会で佐野選手は世界選手権を経験して、200mで5位、400mで6位になっていて、経験が上の選手なので、期待しています。

<了>

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著者プロフィール

2000年シドニー五輪200メートル背泳ぎ4位入賞。「ハギトモ」の愛称で親しまれ、現在でも4×100メートルフリーリレー、100メートル個人メドレー短水路の日本記録を保持しているオールラウンドスイマー。現在は、山梨学院カレッジスポーツセンター研究員を務めるかたわら、水泳解説や水泳指導のため、全国を駆け回る日々を続けている

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