最後の五輪主将・植田辰哉が導く北京への道=バレーW杯・男子
4大会ぶりの五輪を目指す全日本男子を指揮するのは植田辰哉監督。全日本は、自らが主将を務めた1992年バルセロナ五輪以降、五輪から遠ざかっている。しかし2004年秋の監督就任以降、科学的なトレーニングやメンタル面の強化を重視するなど、計画的にチーム作りを進め、05年のアジア選手権で10年ぶりに優勝、06年世界選手権でも24年ぶりの8強入りを果たすなど結果を出してきた。世界ランキングは10位と五輪出場安全圏とは言えないが、悲願達成を狙う指揮官が、W杯を控えた心境と全日本強化のための信条を語った。
五輪出場への期待と緊張
1992年のバルセロナ五輪で主将を務めた植田監督。15年後の今、指揮官として全日本を五輪へ導く 【坂本清】
私も過去に代表選手として戦ったこともありますし、オリンピックの出場権を取った瞬間の喜びも味わった事もあるだけに、非常に身が引き締まる思いです。日本を代表していろんな方々の期待を背負って戦うわけですし、オリンピック出場というのがどれだけ大切なことなのか、そういう期待を背負って結果を出すということはどれだけ厳しいことなのかも感じています。
そして、選手たちが危機感を持ちながらも、ひとつひとつ(目標を)達成している姿を見ると、もしかしたら(五輪が)近づいてきているという期待感もあります。毎日いろんな気持ちが交錯していっていますね。
――世界と戦うなかでの日本の武器は?
W杯には、世界のトップレベルのチームがきます。日本の世界ランキングは、今大会の参加国の中では6位ですけど、それ以上の強豪がくる。(強豪に)どうやって勝つかというと、技術で勝っていくしかありません。あとは日本人が持つ知能、戦略的なことを含めて、戦っていかなければなりません。それは昨年からずっと言い続けていることなので、今持っている技術を最大限生かして戦っていくことが大事です。パワーとか高さでは劣るかもしれませんが、しつこさや細かいプレーで勝っていく。これが日本バレーです。
――気持ちという“情”の部分と、技術という“実”の部分が重要ということでしょうか?
以前に、記者の方から「監督はたまに滝に打たれたりしていますよね。そういうのを知らない人が見ると根性論だけで走る人に見えます」と言われたことがあります。
でも、実際は相当な情報量のデータを選手たちに渡しています。(数字を重視する)このやり方は、私らしくないとは思います。でも、私も監督経験を毎年積み上げていく間に、いろんな情報を仕入れる必要がありました。その中で集まった情報を選手たちに与えるようにしています。根性論だけでは勝てません。
今回のチームは、情報、科学的なトレーニング、食事などいろんなことを含めて、そういうことをしっかりやっていくチームです。
それでも逆に、最後に必要なものは何かと聞かれたら「気持ち」ですね。最後はどこに結びつくかというと、メンタルなんです。
その情報というのは私が教育する必要があるし、ナショナルチームがメンタルの教育をきちんとやっているということが小中学生に届く事によって、男子バレーの強化体制が小学から大学、全てにおいてきちっとできる体制にもう一度戻っていくんじゃないかと思っています。そういう意味では、われわれの役割は非常に大きいと思っていますし、ナショナルチームの選手もきちっとやっていく必要があると思います。ですので、メンタル面の教育もするようにしています。
――コートに立つときにその心を持つ事が大事?
まず全て出し切った、やり遂げたという気持ちです。そしてわれわれが通ってきた道に携わってこられた方々、ファンの方々の思いを胸にしっかりと持って開幕を迎えてコートに立ちたい。そういう覚悟は常に持ちたいと思っています。
<了>
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