男くさくて、潔い試合を見よう!

安田拡了

9.6ノア日本武道館で雌雄を決する森嶋(左)と健介(右) 【スポーツナビ】

「感情移入できる試合はどこぞにないもんかな…」

 そんなふうに思うのは、最近はプロレスラーが小型化し、技術化して、プロレスの考え方が楽しい面白いものに変容してきた結果「力強く、男くささを感じさせるスポーツ」として見ることが少なくなってきているからだ。

 ところが「お、これは!?」と飛びつきそうな試合を見つけた。

 9月6日、日本武道館のNOAH。

 第12代GHCヘビー級王者、森嶋猛に佐々木健介が挑戦するのだ。これは文句なしに凄い試合になると思う。

当世の若いレスラーにはない重厚さ

8.30ディファ有明の前哨戦では、お互い必殺技を繰り出していった 【スポーツナビ】

 この間、2人の前哨戦がタッグマッチとして行なわれたが、目を血走らせ、我が身を壊さんばかりに突進する森嶋と健介の闘いには体中の血が沸騰するかのような興奮を覚えた。なんというか、いまを生きるんだという激しい気持ちがズンズン伝わってきた。

 タイトルマッチというと、相手の出方を見ながら、じっくりと闘うことが多い。また、結果的にそれがタイトルマッチを重厚にすると考えている選手も多い。キャリアと技の多彩さをタイトルマッチらしくたっぷりと見せるというわけだ。

 しかし、この2人にはキャリアだの技だのそんな御託を並べたプロレスの発想がない。目の前の敵は「一気に叩き潰すだけ」というシンプルなプロレス。これが男くささ、力強さをいっそうそそらせるのだ。

 森嶋は2007年2月、アメリカ・フィラデルフィアでROH世界王者になった。凄いのは20回も同王座の防衛に成功しているという点である。これは現地のプロレスファンに、その凄みが歓迎されているからに他ならない。大きい肉体でありながら、動きも早いし、受身もうまい。これが評価されているのだろう。だから、もっと威張ればいいのに淡々としているのも、当世の若いレスラーにはない重厚さを感じさせて、私的に好感が持てる。

 プロレスに言葉は要らないというのが信条だという。

 目は口ほどにものを言うというが、プロレスラーに限っては、リング上での迫力が一万遍の言葉にまさる。森嶋のプロレスはまさにそれだ。

 そんな森嶋が三沢光晴からGHC王座を取ったのは3月のことだった。この時、インタビューを受けた森嶋は「あそこまで的確にアゴに入ってくるエルボーは、いろんな外国人とやってきた積み重ねでしょうね」と語っていたが、自分のROHでの経験を重ね合わせ「俺も成長したんだ」と心で感じ取っていたに違いない。

 また今後のことを聞かれて「でかさとか重さとか、ほかの人が出来ない、自分の長所を生かした試合がしたい」「ほかの人と絶対に違うことをしたいなと思います。まあ、まだ試合もやってないから、いまの時点で何を言ってもしょうがない」と話していた。

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