俳優ジョン・キューザックが見つけた? 「フクドメッチの穴」=小グマのつぶやき
「マルコヴィッチの穴」のキューザックがゲスト登場
なぜ、この話から始めたかというと、先日24日(現地時間)にその主人公を演じたキューザックが、リグレー・フィールドを訪れたからである。彼はイリノイ州のエバンストン出身。シカゴでも映画の撮影をするなど地元を愛する男だ。そして、年に1度は7thイニングストレッチ(7回になるとスタンドのファンが立ち上がり、体を伸ばしながら歌を合唱する)のゲストとしてリグレーに招かれるという根っからのカブスファンなのだ。来場した彼を見て、すぐに「マルコヴィッチの穴」のクレイグがよみがえった(もちろん長髪でも、弱弱しくもなかったが)。彼は7thイニングストレッチで「テーク・ミー・アウト・トゥ・ザ・ボール・ゲーム」を歌ったのだが、その一室はわれわれプレスボックスの横で、かなり狭い場所である。そう、クレイグが「マルコヴィッチの穴」を見つけたレスター社の7と1/2階のオフィスのように……。クレイグ、見つけてくれよ、「フクドメッチの穴」を。そして、彼が何にもがき苦しんでいるのか、どうして不調に陥っているのか、発見してくれよ。そんなことを考えていた数分後、フクドメッチは2ラン本塁打を打った。しかも、代打で。この日、福留は初めて「休養ではない」スタメン落ちを経験し、ベンチから戦況を見つめていた。キューザックが歌っているとき、まだボードに「FUKUDOME」の名前はなかった――。
ときに頑強すぎてしまう福留の信念
ただ、これは報道陣に限ったことではないかもしれない。福留は日本で9年、バリバリの一線で活躍した選手である。その中で培ったことを、「メジャーでもやるだけ」と常に話しており、打撃に対する信念は確固たるものがある。だから、まだ1年通して見ていないコーチや監督が言ったことを、すぐに取り入れることはしないだろう。今月10日に打撃不振を現地記者に追及され、打撃コーチとしっかりと話し合っているのかを尋ねられたときも、「たまに話をしたりしますけど、ペリー(コーチ)も(ことし)初めて僕を見ているわけだし、どの時がいいのか、どの時が悪いのかというのは、まだはっきりと分からない状況がある。それは話をしながらこちらも対応をしていかなきゃいけない」。
確かに、プロとして、メジャーリーガーとして当たり前のことだ。言われたことをただやっても、自分の中で消化しきれなければ意味がない。ただ、結果が出なければ、自分のスタイルを貫くのは至難の業である。貫いたとしても、それで打てなければ、どんどんと風当たりは強くなる。そして、スタメンを外される、という道が迫る。
キューザックの予言?
だが、われわれの前で福留はこういった。「(監督の)言ってることは理解できます。(ただ)それが今までのスタイルと、という話になったときは、もう少し(自分は)ここをこうした方がいいのかなという部分もありますけど。それは今まで僕を見ているわけではないので、仕方がないこと」
やっぱり「フクドメッチの穴」に入るのは難しそうだ。
そういえば、キューザックが意気揚揚と球場を引き揚げる際、突撃取材を敢行。「穴は見つけたか?」とは言えず、福留について聞いた。そして、何やら予言めいたことを言って、姿を消した。「(スランプは)みんなが通る道。大丈夫。彼ならやれる」
ホームランを打った翌日、福留は5月14日以来、実に3カ月ぶりの3安打と爆発。メジャー自己最多の4打点をたたき出した。この日、福留は監督やコーチが見守る中、早出特打ちを行った。自分の知る限り、福留の早出特打ちはメジャーに渡ってから初めてのことだ。
もしや――。クレイグが「フクドメッチの穴」を見つけて、監督やコーチに教えたのかな!?
<了>
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