選手がマスコミ不信? 中国の五輪報道事情
アイドル選手へのバッシング騒動
飛び込みの郭晶晶は実力と端正な容姿で注目を集めるが、2月のW杯では会見での言動が問題視されて話題となった 【 (C)Getty Images/AFLO】
そして、この日から“郭晶晶バッシング”が始まった。各新聞・テレビがこぞって「(彼女の態度は)芸能界のスターのよう」、「モラルのかけらもない」などと批判する記事を掲載した。その後、郭は「自分の行動がこんな結果になるとは思わなかった」と涙ながらに弁解し、専属コーチが「満足いく成績が出せなかったことと、大きなプレッシャーが原因。許してやってほしい」とメディアに理解を求めて、ようやく事は収まった。
この“事件”について、中国人記者は、北京五輪を前に選手が感じているプレッシャーが表れたものと解釈した。記者たちの間では「有力選手がプレッシャーにどう対処するか」がテーマとなり、その後しばらく、国内外のアスリートの記者会見では必ず「プレッシャーは感じるか」、「それをいかに解消するか」という質問が飛び出した。だが、その大きなプレッシャーを作り出している張本人が、ほかでもない中国メディア自身だということを記者たちは分かっているのだろうか。
病院のベッドにも押しかける報道陣
日本では取材の際、所属の連盟や団体に申請を出すというのが一般的だが、中国はそれでは、結局、あちこちたらい回しにされて、選手にたどり着けない。選手に直接、電話連絡して「よろしく」とやるのが一般的なのだ。だから、“優秀な”記者は数多くの選手やコーチの携帯ナンバーを知っている。そして、報道内容も、各競技の内容にとどまらず、チームの誰と誰は仲が悪いといった内紛めいた話題や芸能欄顔負けのスキャンダラスな話題が紙面を踊る。日本の記者なら知っていても外には出さない“裏側”が大きく取り扱われる。
マスコミ不信…敵は自国メディアか
大きな注目はプラスにもマイナスにも働くが、北京五輪ではどのような結果が待ち受けているのか 【 (C)Getty Images/AFLO】
今年初めから、中国国家代表の宿舎がある体育当局の門は、ピストルを配備した『武警』が警備しはじめた。これまではチームの許可さえあれば入れたのだが、今後は当局の許可が必要になる。この目的の一つはメディア対策だろう。ただ、それでも各メディアはあの手この手で、選手と接近し、少しでも新鮮なネタを拾おうと必死だ。北京五輪が近づくにつれ、スポーツ紙だけでなく、一般紙もスポーツ欄を拡大して、さまざまな方面からのスポーツ報道を行っている。その鼻息の荒さは、筆者がこれまでに経験した国際大会の比ではない。中国人アスリートたちの最大の敵は、米国勢でもロシア勢でもなく、自国のメディアなのかもしれない。
<了>
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