国王杯を席巻するアルゼンチン人監督 新世代の指導者が台頭、活躍の場は世界へ

準決勝進出4チームのうち、3チームがアルゼンチン人監督

握手をするジネディーヌ・ジダンとエドゥアルド・ベリッソ(右)。レアル・マドリーを破っての準決勝進出となった 【写真:ロイター/アフロ】

 コパ・デル・レイの準決勝に勝ち残った4チームのうち、バルセロナはベンチにアルゼンチン人監督が座っていない唯一のチームとなった(そのバルセロナもピッチ上ではアルゼンチン代表のエース、リオネル・メッシがけん引している)。

 そこで問いたい。なぜスペインではアルゼンチン人監督の成功例が相次いでいるのか?

 例えばセルタ・デ・ビーゴは、数年前まで今ほど上位争いに顔を出すチームではなかった。2部で過ごしたシーズンもあったくらいだ。それがエドゥアルド・ベリッソの指揮下では安定した成績を収めており、今後を見据えた中長期的なチーム作りもできている。

 好調を維持するセルタは今季、ヨーロッパリーグで決勝トーナメントに進出。コパ・デル・レイでは現地時間1月18日の準々決勝第1戦でレアル・マドリーをサンティアゴ・ベルナベウ(レアル・マドリーのホームスタジアム)で破り、苦しみながらも4強入りした。

 そのセルタに敗れる3日前、レアル・マドリーはやはりアルゼンチン人監督が率いるセビージャに1−2で敗れ、昨季から保ってきた40試合の無敗記録が途絶えた。今季からセビージャを率いるホルヘ・サンパオリは2015年のコパ・アメリカで開催国チリを初優勝に導いた監督だ。そして彼の後任にも同郷のフアン・アントニオ・ピッツィが就任し、16年のコパ・アメリカ・センテナリオでは連覇を実現している。

昇格1年目のアラベスを準決勝に導いたペジェグリーノ

昇格1年目のアラベスを率いるペジェグリーノはチームに堅固な守備組織を作り上げた 【Getty Images】

 準決勝でセルタと対戦するのは、01年のUEFAカップ決勝でリバプールに敗れ、02−03シーズンに2部に降格、その後は2部や3部でさまよっていたアラベスだ。

 アルゼンチン出身であるマウリシオ・ペジェグリーノ監督は、昇格1年目のチームで極めて堅固な守備組織を作り上げた。1月28日に行われたリーガ・エスパニョーラの第20節でも、アトレティコ・マドリーを相手に粘り強くスコアレスドローに持ち込んでいる。

 同じくコパ・デル・レイで準決勝に勝ち進んでいるアトレティコ・マドリーで長期政権を築いたディエゴ・シメオネは、セルタやアラベスを率いる同胞たちに先駆けて多くの成功を手にし、クラブのカリスマ的存在となった監督だ。

 2月1日に行われたホームの第1戦ではバルセロナに1−2で敗れたが、近年アトレティコはチャンピオンズリーグの決勝トーナメントでバルセロナを2度も敗退に追い込んでいる。第2戦でもバルセロナを大いに苦しめることは間違いないだろう。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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