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元NBAフロントはBリーグをどう見たか
優秀な選手育成には「時間と努力が必要」
世界を知るデイヴィッド氏は、日本バスケ界をどう捉えているのか
世界を知るデイヴィッド氏は、日本バスケ界をどう捉えているのか【スポーツナビ】

 2016年の12月半ば、「ワッサーマン」という世界で5本の指に入るスポーツエージェンシー(代理人業務やブランディング・マーケティング業務などを行う)の要人が来日した。バスケットボール部門のトップを務めるジョージ・デイヴィッドという人物である。


 米ロサンゼルスに本社を置き現在NBAのスター選手であるラッセル・ウェストブルック(オクラホマシティ・サンダー)やアンソニー・デイビス(ニューオーリンズ・ペリカンズ)など数多くのエリートアスリートをクライアントとして抱える同社。Bリーグでは、元シカゴ・ブルズのポイントガード、B.J.アームストロング氏がアルバルク東京のディアンテ・ギャレットの代理人を務めるが、彼もワッサーマンの所属だ。


 デイヴィッド氏が来日した目的は、主に日本1年目のギャレットの状況を見ることに加え、新たに発足したBリーグというプロバスケットボールリーグの現状や将来性などを探る視察のため。その間に取材を受けてもらったが、彼の話す言葉にBリーグの今後が占うことのできるいくつかのキーワードが見えてきた。

ギャレット来日の裏にあった確信

 デイヴィッド氏がワッサーマンに入社したのは15年の話で、まだ2年ほどしか経っていない。が、プロバスケットボールとの関わりは長く、入社以前の約17年間はNBAデトロイト・ピストンズに在籍。スカウトディレクターや選手人事ディレクター、アシスタントGMなどフロントオフィス業務などを務めていた。在籍中の03−04年、04−05年シーズンにチームはNBAファイナルへ進出し、03−04年にはチャンピオンとなっている。


 ピストンズにおける年月の大半で選手の査定を担ってきた同氏は、NBAのみならず下部リーグのDリーグ(=NBAディベロップメントリーグ)やスペインをはじめとした米国外のバスケットボール事情にも明るい。その意味では選手を見る目はこれまでの経歴で養われている。


「どういう選手が日本でフィットするかはこれから様子を見ていきたい」としたデイヴィッド氏だが、ワッサーマン契約のBリーグ選手第1号となったギャレットに関しては、196センチの身長ながら司令塔であるポイントガードでプレーができ、なおかつ4つのポジションを守れてチームにフレキシビリティ(柔軟性)を与えることができるため、活躍する確信があったという。これまで日本のチームが外国人に求めるのはもっぱらインサイドでのサイズであった。が、同社が今後連れてくる選手もギャレットのようなアウトサイドのプレーメイカー型の選手になるかもしれないと同氏は示唆した。

海外エージェンシー参入で日本に影響は?

ワッサーマン契約のBリーグ選手第1号となったギャレット
ワッサーマン契約のBリーグ選手第1号となったギャレット【写真:アフロスポーツ】

 ワッサーマンという力と実績のあるスポーツエージェンシーの日本市場参入は、まだ欧米のように代理人制度が浸透していない(日本人選手ではごく少数しか代理人を雇っていないと言われる)日本バスケットボール界を活性化し、選手移籍などの面でゆくゆくは影響を与える可能性も出てくる。


 バスケットボールの試合の質そのものと同様、国やリーグによっては競技を取り巻く環境や慣習などもまたさまざまだ。日本についての知識が少ないだけに、日本人選手の多くが代理人を採用していない件についてデイヴィッド氏は「コメントを差し控えたい」と話したが、欧米スポーツにおける一般論として選手が代理人を雇うことの利点は、球団との契約交渉に留まるものではないと力説した。


「選手がとりわけ高いレベルのリーグでプレーする場合は、代理人はその選手のブランディングからマーケティング、クラブとの契約交渉、メディア露出など多面的に関わります。代理人がいることでそうした契約ごとなどをうまく回せますし、選手にとって最良の条件を導き出すことができます」(デイヴィッド氏)


 現状で代理人を使う日本人選手は少数派だとはいえ、完全プロ化したBリーグでは今後選手の移籍等も従来よりも流動的になり、またリーグの価値が着実に上がっていけば、デイヴィッド氏の指摘するようにコート外でのメディア露出やスポンサー活動において代理人の必要性が徐々に認識されてくる可能性はある。

永塚和志
1975年、茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙『ジャパンタイムズ』記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある