Jチェアマンが見たBリーグの盛り上がり ハピネッツのホームにあった多くの気づき
Jリーグチェアマンが秋田でバスケ観戦
秋田ノーザンハピネッツのホーム開幕戦を視察する、村井満Jリーグチェアマン(右) 【宇都宮徹壱】
「もうね、よかったですよ! こんなに盛り上がっているとはちょっとびっくりです。想像以上でした」
試合後、興奮気味にまくしたてたのはJリーグの村井満チェアマン。試合と言ってもJリーグの試合ではなく、Bリーグの秋田ノーザンハピネッツの試合、それもアルバルク東京とのホーム開幕戦のことだから興味深い。
9月22日のBリーグ開幕戦、アルバルク東京vs.琉球ゴールデンキングスの歴史的一戦も視察していた村井チェアマンは、「A東京を比較できるじゃないですか。アルバルクというチームが地方でどのように映るのか興味があって……」と秋田視察の理由を説明したが、試合後は終始ハピネッツの熱狂的ブースター「クレイジーピンク」が織りなすアリーナの感想ばかりだった。
Bリーグが理念の一つに掲げる「夢のアリーナの実現」には、「地域に根差したスポーツクラブとなり、(中略)スポーツを通して人生を楽しむことができるような環境を提供する」という一文がある。Jリーグの理念にも「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与」という項目がある。クラブ名に地域の名称を入れることで特定の企業に依存しない地域密着型のプロスポーツクラブ経営を促し、日本におけるプロスポーツ産業をけん引してきたJリーグ。そんな地域密着型プロスポーツの“先駆者”であるJリーグの長が、日本バスケットボール界でも屈指の盛り上がりを見せる「クレイジーピンク」を目の当たりにした。それも、Bリーグ開幕戦を視察してから1カ月もたたないうちに、自ら再びバスケ会場に足を運んでのことである。
Bリーグが与えた衝撃
「ホスピタリティーのベースができているからこそ、エンターテインメントとしてしっかりプログラムされている」、と感想を語った村井チェアマン 【宇都宮徹壱】
「ずっとマークしていたんですよ。もう80歳も超えているであろうご夫婦だったのですが、全身ピンクのTシャツを着てメガホン持って叫んだり、タオルを前後に出し入れしたりして、もう完全にノッているんですよ。これは驚きでしたね」
Jリーグの試合会場にも高齢な方々の姿は見かけるが、その様子に違いを感じたようだ。
「これは本当に学ばなければいけないですよ。プロの興行でお金をいただいているんだから、楽しく大騒ぎして帰っていただく。音響の設備だとかは相当高性能なものを入れているんじゃないですかね?」
よほど気になったようで、ハピネッツの水野勇気社長に会うや音響設備について尋ねていた。Jリーグの試合会場ではスタジアムに標準で取り付けてある設備を使用するのが常。スタジアムDJが選手紹介時に大きな声で盛り上げると、音がハウリングしてしまい逆に聞きづらくなってしまうことも。BリーグもJリーグも同じ入場者商売であるだけに、村井チェアマンは経営者としての責任感を感じたのだろう。しっかりとした口調でこう続ける。
「Bリーグが理念で掲げているエンターテインメントというのも、過度な演出とかではないですね。ちゃんとお客様に聞こえるような品質のスピーカーを入れているとか、ちゃんとスポンサーなどへのホスピタリティーをしっかりしているとか、ビジョンに何が表示されているのかを観客が見えるとか、そういうところのベースができている。だからこそチアが踊っているとか、表面的なものじゃないものまでしっかりプログラムされている感じがしますよね」
バスケ観戦とサッカー観戦は違う競技であり、当然のごとくその魅力もそれぞれ。しかし、村井チェアマンが言うように、プロのスポーツ興行として「いいとこどり」は可能なのである。