守備力の福岡第一、桜花学園は総合力のV ウインターカップに見た高校バスケの今

平野貴也

男子は福岡第一が11年ぶりの優勝。混戦模様を抜け出し高校バスケ2冠を達成した 【坂本清】

 高校バスケットボールの冬の祭典「ウインターカップ」は29日に最終日を迎え、男子は福岡第一(高校総体1位/福岡)、女子は桜花学園(高校総体1位/愛知)が優勝を飾って幕を閉じた。

 高校のバスケットボール部は、1年間に3つの全国タイトル(高校総体=インターハイ、国体少年の部、全国高校選抜優勝大会=ウインターカップ)に挑戦できるが、3年生にとって最後の大会となるウインターカップは、テレビで放映される最も華やかな舞台だ。23日から1週間にわたって行われた大会には、のべ5万5561人(最終日6973人)名の観衆が足を運び、熱戦を見守った。

福岡第一は高い守備力で粘り勝ち

 男子で11年ぶり2度目の優勝を果たした福岡第一は、主将の重冨周希と双子の兄である友希の重冨ツインズがチームをけん引。2人でガードを務め、外からの切れ味あるドライブや外角からの正確なシュートで得点を決めるだけでなく、オールコートディフェンスで相手に激しくプレッシャーを与えてボールを奪うなど、守備面でも貢献度が大きかった。準決勝では2度のオーバータイムにもつれる接戦を制し、決勝は圧倒的な得点力を誇る東山(高校総体2位/京都)をロースコアに抑えて81−78で勝利した。

 井手口孝コーチは「相手に対してどう守るかというところから入るが、インターハイのときに東山については随分と研究したし、あまり変わっていなかったので(的を)絞りやすかった」と守備を勝因に挙げた。4強には、それぞれ異なる攻撃の特徴を持ったチームが勝ち残ったが、速攻を得意とする福岡第一が高い守備力で粘り勝ち、混戦模様だった大会を制した。

 準優勝の東山は、卓越した個人技でペイントエリアを突破できるフォワード岡田侑大とゴール下を制圧する長身の2年生留学生カロンジ・カボンゴ・パトリックを中心に圧倒的な得点力を見せて勝ち上がったが、初の栄冠には届かなかった。

 3位は、台風の目となった北陸学院(石川)だった。創部4年目で旋風を巻き起こした濱屋史篤コーチは、28歳の若き指揮官。試合展開によっては、あえて得意の速攻を封印したり、戦術的ファウルを効果的に使ったりと幅広い戦い方を見せた。4強で唯一、留学生のいないチームでもあり、健闘が光った。大会優秀選手(ベスト5)に選ばれた大倉颯太ら布水中学校で全国中学校大会を優勝した2年生メンバーが中心のため、来季も注目される。4位は「史上最高の留学生」の呼び声高いディアベイト・タヒロウの活躍が目立った帝京長岡(新潟)が入った。

目立った長身選手のオールラウンダー化

北陸学院の小室悠太郎(右端)ら、長身選手のオールラウンダー化が目立った大会でもあった 【写真:加藤誠夫】

 大会成績以外では、有力な長身選手のオールラウンダー化が目についた。北陸学院は、身長192センチ・体重100キロの巨漢センター小室悠太郎が3ポイント成功数のランキングで全体7位となった。2回戦で東山に敗れた県立盛岡南(岩手)も身長195センチのセンター永田渉が3ポイントを多投。近畿大学附属(大阪)に所属する身長197センチのU−18日本代表フォワード西野曜も外角シュートを多用していた。

 また、ベスト8で敗れた市立船橋(千葉)は、身長194センチの赤穂雷太をガードで起用。長身留学生への対抗策を含め、高さに頼らない「外から打てるセンター」や「高身長のガード」に育てる指導方針の表れだ。2メートル超の世界で活躍できるビッグマンがなかなか現れない現状において、プロクラブや日本代表で外国人選手と戦うイメージを持った選手育成が進んでいる印象だ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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