ロッテ・石川歩、理想の追求 最優秀防御率も「今は試行錯誤」

週刊ベースボールONLINE

【写真:BBM】

  宝刀シンカーに魔球カーブ、そしてストレートのキレも増し、モンスタークラスの投手が居並ぶパ・リーグで、最優秀防御率のタイトルをかっさらった。しかし、この男が興味を向けるのは、自分の理想のピッチングを追求すること、そしてチームに勝利をもたらすことだけだ。

納得のいく試合は4、5試合くらい

 安定感は際立っていた。ルーキーイヤーから3年連続2桁勝利を挙げ、伊東勤監督からも「涌井(秀章)と並び柱になる投手」と絶大な信頼を受ける。しかし、石川歩にとって最優秀防御率のタイトルは結果にしかすぎなかったようだ。タイトル獲得の可能性に見向きもせず、自らの投球内容を向上させること、そしてチームに勝利を運ぶことを選択し、それを「普通にそういう判断をしただけ」と事もなげに口にする。

――防御率2・16で個人タイトルを獲得しました。個人として2016年はどんなシーズンでしたか。

 キャンプでは全然良くなかったんですけど、開幕してから序盤はすごく良かったですね。いい感覚で投げられていました。ただ、中盤以降はちょっと失速したかな。疲れも出てきて、ボールのスピードにもそれは表れていたと思うんですけど。「勝ち星を狙う」というよりも「ゲームを作れればいいかな」というくらいで投げていたので。

――抑えた試合であっても「調子が良くない中で……」というコメントがよく聞かれました。その中でゲームを作り、勝利を運ぶ投球ができたのはなぜでしょうか。

 自分でも知りたいですね(笑)。なんで抑えられたのか分からない。少し間違えれば大量点を取られたかもしれない試合もあったので。結果だけを見れば良かったなというだけで、内容やボール自体は良くなかった試合も多かったです。

――最後にあと1試合、登板のチャンスがありました。勝利していれば最多勝、最高勝率のタイトルも獲得できる可能性がありましたが、回避してクライマックスシリーズ(CS)に専念しました。

 まあ、普通にそういう判断をしただけで。シーズン終盤はあまり状態が良くなかったので、それで投げて勝っても運が良いだけ。運でタイトルを取ってもあまりうれしくないですし、それだったら少しでも状態を上げるために疲れを取りたいなと。チームが4位でシーズンを終えるとなっていたら投げていたかもしれないですが。

――3タイトルがかかっていた、という質問はあまり意味を成さない。

 あんまり興味が……まあ、興味がないわけではないですけど。自分がいい状態でいいボールを投げて、ということができた上での結果だったらうれしいですけど、そうでないのなら……。

――例えば同じ勝利でも納得のいく勝利と、そうではない勝利がある。

 そうですね。今シーズン、納得のいく試合は4、5試合くらいありました。やっぱり真っすぐがいっているかどうか。真っすぐがいっていればそれだけでうれしいし、いいフォームで投げられているということなので、ほかの変化球もある程度いってくれますし。

持ち球を全て使わないと抑えられない

今季、確たる結果を残した石川だが、これからも“理想の追求”は続く 【写真:BBM】

――今シーズン、投球の組み立てに変化はありましたか。

 いや、球種の割合とかは変わっていないと思います。ただシンカーは昨年より良かったなと思いますね。昨年はシンカーがあまり良くなくて、その代わりに真っすぐが良かったという感じだったのですが、今年は真っすぐもある程度良くて、シンカーも1年目(14年)くらいの感じで投げられていたので。1年目はシンカーを振ってもらえる場面が多かったのが、昨年は見極められることが多かった。それが今年は自分のイメージ通りに曲がっていたかなと思います。

――シンカーが武器ですが、カーブも被打率1割3分7厘とほとんど打たれていません。

 僕は持っているボールを全て使わないと抑えられないので。その中でもカーブはけっこう曲がるかなと思いますし、使うのが苦手なボールではないですね。いいときはいつでもストライクが取れる。ただ、カーブであってもシンカーであっても、相手の頭にないボールを選択していかなければならない。そちらのほうが大事になりますね。

――ストレートの伸びも良かったように感じます。

 先ほども言いましたが、シーズンの最初のころは良かったですね。ただ、いい悪いの差がすごくあった。いいときでも150キロは簡単には超えられないですし、真っすぐのスピードやキレにはもっとこだわってやっていきたいです。

―― 一方で被本塁打は16(リーグワースト3位タイ)と増えてしまいました(14年10本、15年15本)。

 シーズン中盤のころは「毎試合打たれるなあ」と思いながら投げていましたけど(笑)。ただ、そこはあまり意識していないです。フォアボールを出すよりは打たれたほうがいい、くらいに思っているので。まだコースを狙ってストライクを取れるというレベルにはないですし。バッター有利のカウントでもしっかりコースを狙っていけるようになれば、(被本塁打も)減るかなと思います。

――162回1/3で22四球でも、まだ精度が足りない。

 いや、僕は全然コントロールは良くないので。ストライクは取れますけど。だからホームランを打たれる。ホームランを打たれないように投げようと思えば、投げられると思いますよ。ただ、その分フォアボールが増えると思う。それだったら別に……。

――もう一つ数字を挙げると、左打者の被打率2割0分9厘に対し、右打者では2割6分7厘に上がってしまいます。

 いい右バッターには打たれてるなというイメージはあります。僕、右バッターに有効なボールってあんまりないんですよ。シンカーにしても(右打者に)入っていくボールなので、たぶん打ちやすいと思う。逃げていくボールがないので、やっぱり厳しい。

――スライダーも持ち球です。

 スライダーは全然自信がないので。特に真っすぐがいっていないときは、右バッターにスライダーを投げるのは怖いですね。だから正直、右と左だったら右バッターのほうが嫌だなという感じはあります。

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