ロッテ・石川歩、理想の追求 最優秀防御率も「今は試行錯誤」

週刊ベースボールONLINE

理想形を手放した今シーズン

リーグトップの3完封5完投をマーク。「リリーフの負担を減らせれば」とエースの自覚も増している 【写真:BBM】

 誰もが“自らの理想形”をつかんだのだと思っていた。そうでなければ、16年の石川の際立つ安定感を説明することができない。しかし、実際は一度、理想形を手放すことで今シーズンのピッチングを導いていた。リーグを代表するエースの一人となり、個人タイトルを獲得しても、いまだ発展途上――。石川歩という投手の完成型を見ることができるのは、まだこれからだ。

――シーズン序盤の好調に比べ、中盤以降は継続性に問題があったということですが、原因は何でしょうか。

 コンディショニングでしょうね。ずっと調子がいい状態で投げるというのは1年目から、もっと言えば社会人のときから目標にしてやってきました。25試合投げるなら、25試合全部、ある程度いい状態で投げるというのが目標なんですけど、1年目は半分できるかできないかでしたね。2年目は6割くらい、今年は7割くらいはいったかなと思うので、少しずつは上がってきていると思います。それでも100パーセントを目指してやりたいので、まだまだだなと思いますけど。

――その中でもリーグトップの3完封、5完投を記録しています。

 昨年までに比べたら、簡単に長いイニングが投げられたなという感じはあります。「あ、もう5回だ」「もう7回だ」みたいな。余力を残しながらの投球は増えましたね。スムーズに体を使って投げられているので、疲労度が減ったのかなと。

――フォームは変えず、メカニックの部分でスムーズになった。

 それが……そうでもないというか(笑)。実は今年、感覚的な部分で昨年までとは微妙にフォームを変えたんです。キャンプからオープン戦にかけてあまりに調子が上がらなかったので、少し変えてみたらいい感じではまって。ただ、それは昨年まで追い求めてきた自分の理想形とは少し違うものなので……。

――具体的にはどう変わったというイメージなのでしょうか。

 言葉で説明するのは難しいのですが……。これまで追い求めてきた理想は、フォーム自体はスムーズな流れの中で、自分の感覚としては最初から最後まで体全体にしっかりと力を入れながら投げることによって、ボールに力を伝えるというものです。それがうまくできれば、フォームは力感がないように見えるのに、ボールはいくので、打者にとってはフォームとボールにギャップが生まれると思うんです。でも今年は、スムーズなフォームを目指すのは変わらないのですが、あまり体全体に力を入れなかった。動きの流れの中で力は抜きながら、最後にバチンって入れる感じです。真っすぐが140キロそこそこしか出ない試合もたくさんあったのですが、それでも「すごく速く見える」と言われたのは、今年の中で一番うれしかったかもしれませんね。

 ただ毎回、真っすぐが140キロの後半から150キロくらい出るようにしていきたい。そのためにはもう少し、最初から最後まで力を入れたほうがいいのかもしれないと思うし、それを理想としてやってきたので続けていきたいというこだわりもある。一方で、今年は力をある程度抜くことで結果が出た。だから来季に向けて、このオフはどちらの方向でやっていくのか悩みどころですね。今年の形に少し理想形を加えるイメージでいこうとは思っているのですが……。まあ、現役を続ける限りは試行錯誤がずっと続いていくんだと思います。

状態が分かってしまえば緊張しない

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――先発陣では涌井投手と並ぶエース格になりました。意識の面で変化はありますか。

 正直に言うと今年、二木(康太)や関谷(亮太)が先発ローテーションに入ってきたじゃないですか。そいつらに「負けたくないな」って気持ちで投げてたんですよ。一時期、僕のあとに二木と関谷が投げるというローテーションのときがあって。僕が炎上して、そのあと2人が抑えたらちょっとみっともないなって思いがあったんで、なんとか勝ちたいって(笑)。実際、二木はオープン戦ですごくいい状態でしたし、関谷もタイプ的には僕と似ている。危機感は感じていました。

――涌井投手は石川投手にとってどんな存在でしょうか。

 お手本になるというか、いつでも結果を出す力があるので、うらやましいというか(笑)。どんなときでも余裕が全然違いますね。大舞台になればなるほど強い。僕はメンタルが弱過ぎて話にならないですから(笑)。

――自分のメンタル面はどう自己分析していますか。

 毎試合、絶対にいいボールが投げられると分かっていれば緊張もしないでしょうけど。実際はブルペンで良くても、マウンドに上がってみるまでは分からない。最初から悪ければ「あ、無理だ」と思って、割り切って投げられるんですけど。その日の自分が実際どうなのか、いいのか悪いのか。そこに対しての緊張ですね。状態が分かってしまえば、良くても悪くても、それに合わせて投げるだけなので、別に緊張もしない。だから、早くそこに持っていきたいんです。

――来季に向けて、フォームのほかにレベルアップを図りたい部分はどんなところでしょうか。

 やはり、まず真っすぐを確率良く投げること。それから、もう一つ変化球を投げられるように、それも操ることができるレベルにと思っています。例年はキャンプに入ってからも真っすぐの状態を上げていくことから始めていたのですが、最初から真っすぐが仕上がった状態でキャンプインして、変化球の練習もできるようにしたいなと思いますね。

――新しい変化球は具体的にどんな球種でしょうか。

 いや、シンカーなんですけど。メジャーだと速いシンカー(ツーシームシンカー/ムービングファストボール系)もあるじゃないですか。僕のシンカーは言ってしまえばチェンジアップのような感じなので。もっと(ストレートのように)速くて曲がるボールも投げられればいいかなと。自分の中ではシンカー自体の幅を広げるイメージですね。

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