遅咲きの25歳、堂々のオランダデビュー 山崎直之がたどり着いたプロの道

中田徹

トライアウトを経てオランダ2部・テルスターに入団

かつてはU−18や19日本代表としてもプレーしたことのある山崎。トライアウトを経てオランダ2部のテルスターに加入した 【写真:FAR EAST PRESS/アフロ】

 トライアウトを受けるためオランダ2部リーグのテルスターに来たのが6月のこと。あれから3カ月。オランダでの滞在許可が降り、KNVB(オランダサッカー協会)に選手登録を済ませたのが9月8日(以下、現地時間)のことだった。

 ミシェル・フォンク監督は「『ユキ』を明日の試合で先発させる。わざわざ日本からベンチに置くために選手を獲らない。彼はまだ言葉の面では不自由だけれど、しっかりと足を使ってコミュニケーションを取ることができるんだ。非常に賢く、そしてうまい選手だ」と9日のデ・フラーフスハップ戦での抜てきを明らかにしていた。

「ユキ」とはFC東京U−18出身で、かつてU−18、U−19日本代表としてもプレーしたことのある山崎直之のことを指す。オランダ人にとって「ナオユキ」は少し呼びづらいということで、「ユキ」というニックネームが定着した。181センチという身長は、巨人ばかりのオランダ人の中でも見劣りしない。

 ザキヤマのドリブル――東京学芸大時代はそう異名をとったらしい。だが、日本でのプロ経験はなく、JFLのアスルクラロ沼津で1シーズンを過ごした後、海外でのトライアウトにプロの夢を懸けるようになった。アメリカやフィンランドで高評価を得ながらも、ビザなどの関係もあって願いはかなわなかった。こうした我慢の末に勝ち取ったプロ契約。FC東京U−18時代は「すぐにトップチームでも通用する」と言われていたタレントは、25歳にしてプロデビューを果たす遅咲きの選手になっていた。

地元紙もそのテクニックを高く評価

 フォンク監督が自信を持って山崎をピッチに送り出すことができたのは、彼の練習試合でのパフォーマンスが良かったからだ。インターナショナルマッチウィークを利用して行った8月31日のヘーレンフェーン対テルスターの練習試合で、フォンク監督は新加入の選手たちに出場時間を与え、結果的には0−1で敗れたものの、彼らのプレーには満足を覚えた。翌日の地方紙『アイマウデン・クーラント』紙は、山崎がドリブルしながらルックアップする写真を大きく掲載しながら、こう伝えている。

「山崎直之はヘーレンフェーン戦で再び、多くのテクニックの引き出しを持っていることを見せ付けた。長くかかった滞在許可証の取得も間近だ。チームメートとのコミュニケーションはスムーズとは言い難いが、ユキの適合問題は徐々に減っている。

『彼はオランダ語を流暢(りゅうちょう)にしゃべる日本人の友人がいるんだ。そのことは重要だ。彼はフットボールをする能力を持っている。それはすでに見せ付けている』(フォンク監督)」

 後に山崎はヘーレンフェーン戦をこう振り返っている。「相手チームには小林祐希選手もいたんです。それで両チームの選手が僕たちに『ユーキ!』『ユーキ!』と指示を出すものだから、こんがらがってしまったこともありました(笑)。自分は良いプレーができたと思います」

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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