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遅咲きの25歳、堂々のオランダデビュー
山崎直之がたどり着いたプロの道

守備面での役割も期待されたデビュー戦

デビュー戦では相手キーマンにマンツーマンで付くなど、守備面での貢献も求められた
デビュー戦では相手キーマンにマンツーマンで付くなど、守備面での貢献も求められた【Getty Images】

 こうして迎えたオランダ2部リーグ第6節のデ・フラーフスハップ戦。試合前にフォンク監督が「ユキを先発で使う」と宣言していたこともあり、バックスタンド側の応援席には日の丸も見えた。またメーンスタンドには熱心な日本人のサッカーファンが駆け付けた。


 攻撃的MFのポジションながら、山崎には相手のキーマンの一人であるアンドリュー・ドライバーにマンツーマンで付くというタスクが与えられたため、守備の面での役割も重要だった。


 デ・フラーフスハップはオランダリーグではめずらしい4−4−2フォーメーションを採用しており、4−3−3のテルスターは中盤で数的不利に陥ってしまう。前半のテルスターは、デ・フラーフスハップのフリーマンを捕まえ切れず、山崎のマークの受け渡しも味方の意図と合わず混乱気味だった。それでも一度ボールを持てば、安定したキープと正確なパスで滅多にロストすることはなかった。


 0−1とビハインドを負った後、45分には山崎はカウンターに参加し、ペナルティーエリア内右奥へ走り抜けてスルーパスを受けGKと1対1になるも、角度のないところからのシュートはセーブされてしまった。


「あれは、ちょっと決めたかったです。(失点シーンについて)前半は相手のアンカーが(フリーで)浮いていたので、僕もどう見ようか考えていたんですけれど、うまく選手とコミュニケーションが取れなくて伝えられなかった。曖昧になってしまったことで、失点につながったのかなと思います」(山崎)

ファン投票でMOMに選ばれる

 後半、テルスターはシステムをデ・フラーフスハップに合わせることで対抗する。テルスターの右サイドバックのステファノ・リリパリーは前に大胆なポジションを取るようになった。山崎はその攻め上がりのケアをしっかりしながらポジションを取り、チームに機能していった。フィールド中央で2人のチャージを受けながら、ターンしてかわしてからドリブルするシーンもあった。


「あれは得意なプレー。相手を見ながら緩急をつけてかわすのは得意なんです」(山崎)


 1−1で迎えた79分、左サイドから右の山崎に大きなサイドチェンジのパスが出る。オーバーラップしたリリパリーに山崎がパスを出した後、再びボールは左サイドへ。ここからのクロスに、リリパリーが美しいボレーシュートを決めてテルスターが逆転に成功した。


 デ・フラーフスハップは終盤、センターバックを前線に上げてパワー攻撃を仕掛ける。87分、巨漢ヤン・ラマースのシュートをテルスターが必死のブロック。さらにこぼれ球をデ・フラーフスハップが拾い2次攻撃に移ろうとする。この苦しい時間帯に、山崎が粘り強い守備でボールを奪い取り、カウンターの起点となってテルスターは一息つくことができた。やがてタイムアップのホイッスルが鳴り、テルスターが2−1で勝利し、勝ち点3を取った。


 それから3分後、場内アナウンスがマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)に山崎が選ばれたことを伝えたのである。


 MOMはホームチームの選手を対象にファンの投票で選ばれるものだ。ホーム初お披露目の試合ということで、多分にご祝儀的な意味合いもあったかもしれないが、フル出場を果たし、しっかりチームの勝利に貢献しただけに非常に価値のあるものだった。


「ユキは試合の中でどんどん良くなっていった。彼はあまり英語をしゃべることができないけれど、試合前に日本人の友人を通訳として介して、戦術をしっかり理解してもらった。後半、うちは戦術を変えたが、ユキの仕事は前半とそれほど大きな違いはなかったし、言葉の問題はなかった。今日のユキの採点は7。合格点だ」(フォンク監督)

「もっとできたという思いが強い」

MOMに選出された山崎。試合後には「もっとできたのにという思いが強い」と語った
MOMに選出された山崎。試合後には「もっとできたのにという思いが強い」と語った【中田徹】

 プロデビューマッチを勝利で飾り、興奮を隠せず山崎がロッカールームへ戻ってくる。シャワーで汗を流してからインタビューに応えてくれるも、再び額は汗がつたう。


「自分にとっては初戦ということで、硬さもあった。なかなか自分の特長であるドリブルや、前を向いたプレーができなかった。苦しい時間帯だったんですけれど、何とか耐えて勝つことができて良かったです」


 オランダに来てから3カ月。待ちに待ったデビューとあって、思うところもあったのではないかと尋ねると、こんな答えが返ってきた。


「今日まで、チームは5試合を戦っていました。外から見ながら、いろいろ思うところもあったし、自分が出たらこういうプレーをしようと思い描いたものがあったんですけれど……。自分としては、もっとできたのにという思いが強いです。


 やっぱり今日は守備に追われる時間が多かったですが、その中でもしっかりキープしてパスの中継点になることや、個人でかわして打開することなどもできると思うので、これから意識してやっていきたいと思います。次の試合からはもっと前を向いたプレーができるよう貪欲に頑張りたいです」


 チームメートたちが「ユキ! MOM! 早く2階に上がってこい」と山崎を急かす。2階のラウンジに行くと、MOMの表彰のために花束とシャンパンが用意されていた。多くの関係者やスポンサーたちからねぎらわれ、スタジアムを出た瞬間、テルスターのサポーターから山崎に「アリガトー!」と叫ぶような感謝の言葉が贈られた。

山崎直之(やまざき・なおゆき

1991年5月5日生まれ、東京都出身。181センチ、70キロ。ポジションはMF。FC東京U−15深川→FC東京U−18→東京学芸大学を経て、2014年アスルクラロ沼津(当時JFL)に加入。15−16年は東京都社会人リーグのHBO東京に在籍。その間もフィンランドや米国で挑戦を続け、16年6月、オランダ2部テルスターのトライアウトに合格。第6節のデ・フラーフスハップ戦、25歳で遅咲きのプロデビューを果たした。U−18、U−19日本代表選出経験を持つ

中田徹
中田徹

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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