再び広がった日本バレーと世界の差 求められる若年層からの強化見直し
試行錯誤が続いたロンドン後の4年間
金メダルを目指した全日本女子の戦いは、準々決勝で幕を閉じた 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
バックアタックを得意とする迫田さおりや、ライトからスピードのある攻撃や相手ブロックの横を抜くストレートへの攻撃を得意とする長岡望悠の持ち味を生かした新戦術は、攻撃面で一定の効果を示した。だがブロック面ではそれまでのサイドで跳ぶブロックとミドルで跳ぶブロックの違いに戸惑い、混乱が生じたところで相手に一気に攻め込まれるなど脆さを見せることになる。ブロックで抜けたボールを個人技でカバーしてくれたリベロの佐野優子がいた頃は何とかチームの戦術として成り立っていた。しかし、佐野が抜けると同様にはいかず、14年の世界選手権で7位という惨敗を喫し、従来通り、ミドルブロッカーの選手が入る布陣での戦いを強いられた。
ミドルブロッカーには島村春世や大竹里歩といったロンドン後に加わった選手や、五輪最終予選の直前に代表復帰した荒木絵里香など、高い打点からコースに打ち分けられる技術を持った選手が起用されるも、速くて低いトスでは持ち味をなかなか発揮できない。セッターの宮下遥が「怖さはあるけれど勇気を持って使わなければいけない」と言い、荒木は「待っているだけではなく、どう入れば上げやすいか。積極的にやっていかないと他のポジションに負担をかけるだけ」と言うように、選手たちの中で「何とかしなければならない」大きな課題であり続けた。
だが、残念ながらリオ五輪が開幕してからも、ミドルの打数は限られ、特に0−3のストレート負けを喫したロシア戦で荒木、島村、山口舞というミドルの3選手のスパイク得点はわずかに4本。ミドルの攻撃回数が少ないことでサイドへのマークが偏り、木村沙織や石井優希といった伸びのあるトスをクロスやストレートに打ち分ける技術を持った選手たちも苦戦を強いられる。相手のそろったブロックや、短いトスに合わせて打たなければならない場面が増え、木村が「ラリーがつながっても得点が決まらない」と言ったように、攻撃力向上、得点力アップはできずに終わった。
世界基準とは異なる日本の強化
ディグ力を高めるために、合宿では男性スタッフの強打をブロックなしで拾う練習に時間を割いてきたが、試合の中でブロックなしにスパイクを打たれる場面は限られている。むしろこの位置からの強打にブロックがどう跳んで、どのコースを塞ぐのか。そして、レシーブはどこまで上げるのかを確認し合うことのほうが、実際の試合に近いイメージがある。しかし、「ディフェンスを強化する」といえば「=レシーブの強化」と考えられがちな日本では、ブロックの重要性に対する意識がやや薄い。
ブロックとレシーブの両方が連係してディフェンス力を構築するはずが、ブロックはブロック、レシーブはレシーブとどこか別のものとしてとらえられているように映った。
これは代表チームに限ったことではない。
ブロックとレシーブが連動せず、ミドルよりもサイドにトスが偏り、なおかつ低くて速いトスで相手を翻弄することを目指す傾向は中学生や高校生での試合でも、当たり前のように見られる。それが現状だ。
育成年代とされる長い年月をかけて培った知識やクセを、代表に入ってからいきなり「世界を基準に考えろ」と言われても圧倒的に時間が足りず、それらをすべて代表の現場スタッフに託されるのは酷な話だ。