再び広がった日本バレーと世界の差 求められる若年層からの強化見直し

田中夕子

世界のバレーは「個」から「組織」へ変貌

世界のバレーは進化した。3連覇を狙ったブラジルは準々決勝で敗退 【写真:ロイター/アフロ】

 ロンドン五輪から4年。世界のバレーは瞬く間に進化を遂げた。10代や20代前半の身長190センチ超える選手が増えただけでなく、基本のパスや二段トスをきっちりこなす。かつて「日本の技術力は世界一」とうたわれたが、大型選手も基礎のプレーを当たり前にやり遂げる技術があり、むしろ日本選手の方がチャンスボールの返球など、基本的なプレーで粗さが目立った。

 単に高さやパワーといった個人の体格やスキルに頼るだけではなく、正確な技術を備え、チームとしてどんなコンセプトでバレーをするか。ベスト4に進出した米国やセルビア、オランダや中国といったチームには高度な戦術を体現できる選手が増えており、「個」のバレーから「組織」のバレーへと変貌を遂げていた。

 世界と同じことをしていては勝てない。そのためにスタッフ陣は研究や分析を重ねて斬新なアイデアを掲げ、選手たちはその都度チャレンジしてきた。だが、世界との差は広がるばかりで、最後の勝負の場となったリオでも埋まることはなかった。

 北京、ロンドンに続き、母国開催となったリオで三連覇を狙ったブラジルは、フルセットの末、準々決勝で中国に敗れた。ワールドカップには出場せず、世界選手権は3位に終わっていたとはいえ、誰もが認める強豪国であり、今大会も優勝候補として挙げられていた。

 万全な準備をして臨んだはずのブラジルですらも直面した、母国開催で勝ち上がることの難しさ。わずか4年後に東京五輪が開催される日本はどうか。おそらくこのままでは、ブラジル以上に厳しい状況が待っているのではないだろうか。

リオの経験を東京へつなげるために

リオの経験をどう東京へつなげるのか。4年後は、あっという間にやってくる 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 長岡や石井、宮下といった選手たちが試合を重ねるごとに成長を遂げたことが大きな成果であるのは間違いない。何より宮下が「経験したというだけで終わらせるのではなく、次につなげなければ意味がない」と言うように、五輪で戦う厳しさに直面した選手は、各々が高めるべきスキルや要素を、リオでの苦い経験から、嫌というほど突きつけられたはずだ。

 だからこそ、トップチームでプレーする選手や現場だけで「金メダルを取れ」と願うばかりではなく、もっと若年層からトップチームまでが一体となり、日本が勝つために何をすべきかを考え、実践する。それがなされなければ、東京五輪での躍進など夢物語に過ぎない。

 どの年代でどれだけの技術を養い、戦術理解を浸透させなければならないか。若年層も含めた1人1人の指導者、そして選手が取り組んでいかなければ、世界との差は埋まるどころか広がるばかりだ。

 もがきながら、世界との差を埋めようと戦ってきた選手たちの五輪は終わった。だがそれは来る東京五輪へ向けたカウントダウンのスタートでもある。二度と同じ轍を踏まぬように。4年後は、あっという間にやってくるのだから。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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