リオで新たな記録に挑むリディア・コ レッドベターがほれ込み育てた逸材
女子の世界ランク1位、リディア・コー(右)がリオ五輪の頂点を目指す 【Getty Images】
リオ五輪ゴルフ競技は男子ツアー選手の出場辞退や開催地に関する懸念事項などが多く報道され、どのような大会になるのか蓋を開けてみなければ分からない状態だ。
出場辞退者が続出した男子に比べて、出場辞退者がほとんど出なかったゴルフ女子競技はメジャー競技と遜色ないハイレベルな試合が展開されるだろう。実力者ぞろいの韓国勢やアメリカ勢はもちろん、全英女子オープンで優勝を飾ったタイなどの新興国の勢力も侮れない。だが、現時点でその新しい歴史の幕開けに名前を刻む可能性が高いのはワールドランク1位に君臨するリディア・コ(ニュージーランド)だ。
五輪ではアイアンの精度が鍵に
女子は6245ヤードのパー71という設定で、パー3が5つということもあり、いかにパーオン率を上げていけるか、ピンに絡むショットが打てるかが優勝争いのポイントになるだろう。
アイアンショットのキレが良く、パーオン率は米LPGAツアー参加選手の中でもトップクラスであるリディア・コにとって五輪コースの特性が有利に働くことであろう。このリディア・コの強みであるショットの精度に貢献しているのが「Aスイング」である。
デビッド・レッドベターの「Aスイング」
レッドベターが提唱する「Aスイング」を取り入れ、成長を続けてきたリディア・コ 【Getty Images】
デビッド・レッドベターはニック・ファルド(イギリス)やアーニー・エルス(南アフリカ)など多数のメジャーチャンピオンのタイトル獲得に貢献し、ツアー選手を指導するゴルフインストラクターのパイオニアとして世界中でその名が知られている。
私は2013年と2014年にレッドベターを日本へ2度招聘(しょうへい)し、アマチュア向けのレッスンイベントを開催した。その際にレッドベターから「Aスイング」の指導法について直接教えを受けた。
「再現性の高い安定したスイングを、より簡単に習得できるスイングを求めてきた」。レッドベターが提唱する「Aスイング」のコンセプトはスイングにおける再現性だ。
「Aスイング」の最大の特徴は、左腕が地面と平行になる直前のバックスイングのポジションに表れている。
「手は常に体の近くでヘッドは外側にキープし、シャフトと背骨は平行のバックスイングを行うことで、今までのように振り上げるバックスイングより20〜25%クラブの移動距離が短い」
レッドベターはクラブと腕を極力動かさずにバックスイングを行うことで動作の無駄を排除し、クラブと体の動きをシンクロさせる。このスイング再現性がショットの正確性と安定性を生みだす。
よりアップライトなバックスイングに
「リディアとは徐々に『Aスイング』を取り組んでいこうと思っている」
レッドベターがリディア・コを指導し始めたころに語っていたプラン通り、リディア・コのバックスイングは年々アップライト(クラブが地面と垂直に近い方向になること)になり、現在は地面に対して垂直に近い形になっている。
リディア・コのスイングはデビッド・レッドベターというツアーで勝つ術を知るアメリカティーチング界の巨匠によってブレることなく進化の道を辿っている。