村田諒太、“もっと上”へと続く快勝 次戦からミドル級王座へ険しい道が始まる
左ボディからたたみかけ1ラウンドTKO
村田はラスベガスの試合を1ラウンドTKOという最高の結果で終えた 【Getty Images】
現地時間7月23日、米国ラスベガスの殿堂MGMグランドガーデン・アリーナで行われたミドル級のノンタイトル10回戦。37歳のベテラン、通算34勝(24KO)2敗3分2無効試合のキャリアを誇るジョージ・タドーニッパー(米国)を相手に、村田は持ち前のパワーボクシングを披露した。
第1ラウンド途中に右から左のボディ打ちに繋げると、タドーニッパーはその場でうずくまる。その後、コーナーで左右をまとめて追い打ちをかける中で、村田の左ボディが再び決め手になった。身体をくの字に折った相手に叩きつけるような左右パンチを浴びせると、ここでレフェリーはあっさりと試合をストップした。
下馬評通りのKO勝ち
下馬評どおりの勝利ではあったが、本にも「予定外に(早く)終わった」と評価した 【Getty Images】
試合後、日本の報道陣に囲まれた村田はやや呆気なかったベガスでの2戦目をそう振り返った。“日本が誇る元金メダリストが本場で圧勝”。そう伝える前に、まずは相手のタドーニッパーが格下だったことを考慮しなければならないだろう。
先住民族コマンチュ族の血を引いていることでも話題になった37歳のベテランだが、34勝の大半は無名相手に挙げたもの。デルビン・ロドリゲス(米国)、パトリック・ニールセン(デンマーク)に喫した過去の2敗はいずれもストップ負けだった。ややだぶついた計量時の身体を見ても、IBF、WBOでは3位にランクされる村田が序盤で仕留めることは予想できないことではなかった。
もっとも、例えそうだとしても、不甲斐ないファイトには容赦なくブーイングを送るベガスのファンの前で、下馬評通りにKO勝ちを収めたことには大きな意味がある。
昨年11月にトーマス・マック・センターで開催されたガナー・ジャクソン(ニュージーランド)戦では、頑強な相手をやや持て余した上での判定勝ち。村田本人も「情けない気持ちでいっぱいです」とうなだれていただけに、すっきりした今回の勝ち方は嬉しかったに違いない。
「(決め手になったボディブローは)流れの中で出たもの。あのタイミングなら誰でも倒れると思います。まずは勝てたことにほっとしている。その上でもっと上の戦いを見ていきたいなという思いが強いです」
会見の途中では、爽やかな笑顔とともに“もっと上の戦い”という言葉が口をついて出た。それが“ミドル級の世界戦線”を意味するであろうことは明白。何より、試合後の流麗な語り口は、本人もこの日のフィニッシュを好ましく思っていることの証に思えたのである。
9月に世界戦の可能性があった!?
「カネロのときのアンダーカードで、(サンダース対)村田って話もあったんですよ。(準備期間が)2カ月で、サウスポー相手が初めてでは無理だって断ったんですが。これだけ大事な試合なので」
“カネロ”とは元2階級制覇王者、メキシコのアイドル的な存在のサウル・アルバレスのこと。アルバレスは9月17日にダラスのAT&Tスタジアム(ダラス・カウボーイズ)でWBO世界スーパーウェルター級王者リアム・スミス(イギリス)への挑戦を予定している。つまり、5万人前後の大観衆が集まるであろう大興行のセミ格で、村田にもWBO世界ミドル級王者への挑戦のオファーが来ていたというのだ。
「(今日の試合が)1ラウンドで終わるのが分かっていたら受けていたんだけど」
MGMの雑然とした通路で、本田会長は苦笑いしながらそう述べていた。ミドル級でタイトル挑戦権を得ることの難しさを考えれば、確かに少々もったいない気もしないではない。特に9月の興行でカネロとサンダースが揃い踏みするということは、12月にも両者が直接対決となる可能性が大。この流れでWBA、WBC、IBF王者が帝王ゲンナディ・ゴロフキン、WBOがカネロといった人気者ばかりになってしまえば、今後、ミドル級王座への挑戦機会はより希少になる。日本以外ではビッグネームと言えない村田のタイトル戦は、2017年9月に予定されるゴロフキン対カネロの最終決戦の後まで待たなければいけなくなるかもしれない。