オランダ2季目へ、調子を上げる太田宏介 プレシーズンで感じた“慣れ”と手応え

中田徹

3試合で1得点1アシストを記録

プレシーズンマッチをこなしている太田宏介。3試合で1得点1アシストを記録した 【VI-Images via Getty Images】

 この夏のプレシーズンマッチで、フィテッセはシャフタル・ドネツク(ウクライナ)、ルビン・カザン(ロシア)といった強豪チームとの試合を重ねている。昨季ベルギーリーグ5位のオーステンデ相手に、太田宏介は強烈なシュートを決めた。スロベニア合宿中に行われたルビン・カザン戦では中国人ストライカーのユニン・チャンのゴールを、クロスからアシストした。

「ここまでの3試合、ユニン・チャンが3点取って、俺が1得点1アシスト。今シーズンはアジアンパワーで行きますよ」と太田は言う。

 フィテッセに入団したのが今年1月。出来上がったチームの中に入っていくことの難しさを太田は感じたが、新シーズンはチームビルディングの段階から関わっていける。

「フィテッセに来た時はチームメートの名前も分かりませんでした。ましてや、オランダのサッカーがどうなのかも分からなかった。こっちに着いて12日後には後半戦が始まった。分からないまま何もかもスタートしました。今は気が楽ですね。練習までの道も見慣れているし、アーネムの町もどこへ行けばいいかある程度分かっています。今は受付の人とか洗濯の人とかフロントの人とか、選手、コーチングスタッフ以外の人も何をしているのか分かるようになりました。見知らぬ顔がなくなっただけでも、だいぶ居心地良くやれています」

左サイドの連係に改善の兆し

 現地時間7月23日、フィテッセはホームのヘルレドームでポルトガルの強豪、ポルトとプレシーズンマッチを行い、太田は80分プレーした。開幕に向けて45分、60分、80分と太田の出場時間が徐々に伸びている。

 昨季は確立できなかった左サイドでのコンビネーションも、NECから加入したナバロン・フォールのおかげで息が合うようになり、太田の良さが随所に現れるようになった。ポルト戦では「前半、特に最初の方はいい形でオーバーラップして楽しかったですね」と太田も左サイドでのコンビネーション確立に手応えを感じていた。

 太田はこの日、CKとクロスから2度チャンスを作った。共にGKイケル・カシージャスを越していくファーサイドへのキックだった。

「これまでのプレシーズンマッチでポルトが一番いいチームでした。フィテッセも結構攻撃を作れていたし、俺のところからのクロスでバーに当たるシュートもあったし、良い形がありました。それが今は大事だと思います。(CKもクロスも)カシージャスの動きを見切りました」

 太田のクロスをファーサイドで合わせたのはユニン・チャン。昨季も、太田のクロスにしっかり入り続けたストライカーだ。

「まだ自分のクロスに入ってくるのがユニン・チャンしかいない。あともう1人2人、入ってきてくれたら面白いんですけれどね」

昨季からの進歩を感じた、29歳の誕生日

 試合はフィテッセが17分、ルイス・ベーカーのミドルシュートで先制したが、79分と83分に2点を失い1−2で逆転負けした。しかし、これも70分、ポルトが一気に6人もの選手を入れ替えたから。キャプテンのグラム・カシアによれば「ポルトはエネルギーもクオリティーも最後に上げてきた。われわれはもう疲れきっていた」という。太田も終盤、暑さと疲れのある中、メキシコ代表のホープ、ヘスス・コロナをマークすることになり対応に苦慮した。

「今日は暑すぎてヘトヘトでしたけれど、昨シーズンにはなかった形が作れました。試合には負けましたが、ミーティングでは『結果も大事だけれど、内容はポジティブ』と(コーチングスタッフが)言ってました」

 この日は太田の29歳の誕生日だった。

「今日、みんなが祝ってくれたんですが、俺、(若い)チームメートとテンションが同じだから、『29になった』と言ったら、みんな、もっと若いと思ってみたいですごく驚いてました。それで『オールドマン』と言われました」

 そして太田はしみじみと言うのだ。「コミュニケーションの面でも昨シーズンよりかなりしゃべれるようになりました。やっぱり慣れですよね」と。
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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