Bリーグが作られた本質の重要性 東野技術委員長が語る強化プラン(後編)

月刊バスケットボール

今年9月に開幕するBリーグと、日本バスケットボール界の強化・育成との関わりについてを東野技術委員長に聞いた 【スポーツナビ】

 6月から日本バスケットボール協会(JBA)が新設した、技術委員会の委員長に就任した東野智弥氏。東野技術委員長へのインタビュー後編では、今年9月に開幕する新リーグ「Bリーグ」と、日本バスケットボール界の強化・育成との関わりについて話を聞いた。

 Bリーグは、日本のバスケットボールを盛り上げるだけでなく、競技レベルを高める上でも重要なファクターになり得る。だからこそ技術委員会では、今後Bリーグと密に連携を取りながら、いくつか新しい取り組みを始めていく方針だという。企画段階ではあるが、JBAとBリーグが連携する「Bサマー」など、今回はその具体的なアイデアの一部を紹介。2020年の東京五輪、そしてその先を見据えたこれらの連携策が、日本のバスケットボールを大きく変えていきそうだ。

日本を強くするためにリーグを向上させる

――今年9月に、日本バスケットボールの新リーグである「Bリーグ」が開幕します。東野さんの立場から、Bリーグにはどのようなことを期待していますか?

 日本バスケを強くするという信念を貫くために、国内でのゲーム内容が非常に大事になってくると考えています。その点で2つのリーグが統合された新しいBリーグには非常に期待しています。Bリーグでは3つのミッションを掲げています。その中でも「世界に通用する選手やチームの輩出」に注目する必要があります。それはとても重要なことで日本バスケ全体に影響があることだと思いますし、私は世界を見据えるためにも、1試合1試合の“ゲームの質”が問われるのではと考えています。

「質」とは具体的にどんなことかと言えば、例えば世界基準のフィジカルの強さ。ディフェンスにぶつかったときに簡単に倒れてファウルをもらっているようでは、世界に出たときに通用しません。つまり、お互いにリーガルなポジションで強くぶつかり合うことを求めたいと思います。フロッピング(審判を欺いてわざとファウルを得ようとする行為)のやり合いでは意味がありません。それは選手だけでなく、コーチも、もちろん審判も共通で認識しなければならない部分です。また、そうしたフィジカルだけでなく、いろいろな面でゲームの質を上げていくために、われわれ技術委員会もしっかり関与していこうと考えています。今後、技術委員会、リーグ関係者、コーチ、レフェリー、オーナーを含めたマネジメント関係者、この5者が定期的に話し合って、リーグがどうすれば向上するのかといったことについて取り組んでいきたいと考えています。

――具体的には、どのようなことを話し合いたいと考えているのでしょうか?

 例えば、今回の男子日本代表は、シーズンが終わってからほとんど休みなくOQT(FIBA男子オリンピック世界最終予選)に入ることになりました。そこで、リーグ期間と代表活動のバランスは、どういった形が最適なのか。そういったことも含めて、関係者みんなで議論していくべきだと感じています。

 そもそも、Bリーグが何のために作られたのかといえば、FIBA(国際バスケットボール連盟)に制裁を受けたから、という単純な理由だけではないでしょう。その根底には、“日本を強くする”という思いがあるはずで、立場が違っても、その信念はみんな変わらないと思います。逆に言えば、その信念が共有化されていなければなりません。それをどのような形で表現し、リンクさせるかが大事だと思っています。

Bリーグと連携した代表強化

14−15シーズンに浜松・東三河フェニックスをbjリーグ優勝に導いた経歴を持つ東野氏(中央)。コーチやスタッフも高い意識を持って試合を行うことが重要と語る 【写真:中西祐介/アフロスポーツ/bj-league】

――Bリーグの成功が、“日本を強くする”ことにつながるわけですね。

 リーグ自体の強化が日本の強化につながるという意味では、Bリーグの成功は代表にとっての成功ですし、代表の成功はBリーグの成功でもあります。逆に、一方が倒れたら他方も倒れる、という危機感もありますね。だからこそ私は、ただ試合をして勝ったとか負けたとか、盛り上がりがどうとか、そういうことだけを取り上げて一喜一憂しないリーグにすべきだと考えています。

 先ほども言ったように、根底には“日本のバスケットボールを強くする”という思いが流れていて、それを全員が意識して、ひとつひとつのゲーム、ひとつひとつのプレーの積み重ねが次につながっているようなリーグになってもらいたいです。

――選手だけでなく、コーチやスタッフもそうした意識を持つことが必要になりますね。

 Bリーグには、当然のことながら結果的に優勝するコーチもいれば、負けるコーチもいるでしょう。でもひとつひとつの試合が代表、ひいては日本のバスケットボール界を作るということになれば、また、そのくらい重いものだと注目されれば、ひとりひとりが存分に指導力を発揮してくれると思っています。

 Bリーグが始まるにあたって、11年間も空白があったA級ライセンスを復活させ、サッカーがJリーグをスタートした時に作った制度、S級ライセンスをバスケットボールでも採用することとなりました。S級ライセンスの採用に際しては、技術委員会の指導者養成部会が管轄してプログラムを作成しました。今回の目玉は、何といっても「世界基準とは何か」を意識して海外(スペイン、セルビア、スペイン)のコーチ、審判を招き、今一度トップリーグのコーチの皆さんに多くの時間を割いてもらい、学んでいただくことでした。

 今までにない、とてつもない戦術、戦略を使ってくるチームも出てくるでしょう。それぞれが学び、レベルアップし、オリジナルを作り出す必要も出てくるでしょう。そうなれば面白いだろうし、そのためには、コンセプトというか、ひとりひとりが工夫することが必要となってきます。そうしたコンセプト作りが“世界基準”であったとしたら、ひとつひとつの選手に問いかける言葉が世界につながっていくでしょうし、またその選手たちが世界とのゲームを少しでも意識してプレーしてくれることにつながっていくはずです。私はそれらひとつひとつが大切なことだと考えています。

――日本の強化のために、今後Bリーグと連携して実施しようと考えている取り組みはありますか?

 まだまだ企画を通す前の段階で私案の域を出ていませんが、2020年の東京五輪までに、今シーズンを入れればBリーグはあと4シーズンあるので、さまざまなアイデアを考えているところです。もしかすると、今までにないとんでもないアイデアを取り入れた方が良いかもしれません。現実的にはそれらのアイデアすべてを実現することは難しいことかもしれませんが、強化するためにBリーグと連携する取り組みという質問に対する答えとしては、とにかくまずはいろいろなアイデアを出し、それらひとつひとつについてBリーグやクラブと真摯(しんし)に検討していく、ということに尽きると思います。

 若い選手たちの育成に関しても同じで、オフシーズンの間に「Bサマー」を開催したらどうかと考えています。これは、私がある方と話していて「サマーリーグをBリーグ主催でやって『Bサマー』と呼ぶと響きがいいですね」という話から出たアイデアです。Bリーグに所属する若い選手や大学生たちを集めて、4〜5日間で何試合も何試合もゲームをする。さらに、そのときに若いレフェリーをどんどん入れて、レフェリーの育成も絡めていければいいなと。そして若いコーチ、アシスタントコーチに指揮を執らせるなど、実現できれば面白そうなことがたくさんあるように思います。このように、たくさんのアイデアをみんなで出し合い、積極的に取り組んでいく必要があるように思います。そのためには、休んでいる暇はありませんね。

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