Bリーグが作られた本質の重要性 東野技術委員長が語る強化プラン(後編)

月刊バスケットボール

Bリーグと日本の未来

「Bリーグがみんなの目標になろうとしている」と東野氏。トップリーグが日本のバスケ界に与える影響は計り知れない 【スポーツナビ】

――日本のバスケットボールが転換期を迎えている今だからこそ、これまでになかったようなアイデアも現実味を帯びてくるのだと思います。今後、Bリーグが日本に与える影響については、どのようにお考えですか? 

 日本のバスケットボールの面白い特徴は、わりと流行に左右されやすいことだと感じています。かつて能代工業高が圧倒的に強い時代は全国的にゾーンプレスがはやり、今はNBAの(ゴールデンステイト・)ウォリアーズの影響で、子どもたちの3Pシュートの本数がかなり増えたと聞きます。それはわれわれにとってはとてもありがたいこと。なぜなら、Bリーグの選手がお手本になれば、それが自然と日本全体に広まることになるわけですから。

 他の国の例を出せば、人口300万人ほどのリトアニアなどは多くのNBA選手を輩出し、FIBAの世界ランキングで3位に位置していますが、その要因は2つあると言われています。1つは目指すべき目標が近くにあること。そしてもう1つは、プレーする場所や目標を持った選手たちを指導する環境が十分にあることだそうです。これは両方ともすごく大事なことですが、日本もリーグが統合されてBリーグが誕生し、Bリーグ、そしてその先にあるNBAが子どもたちの目標になろうとしています。もうひとつの環境に関しては、まだまだリングの数の問題や、公共の施設や学校の体育館をどのようにうまく使っていくかといった問題はありますが、まず1つ目の条件に関してはクリアできる体制が整いました。その影響はとても大きいと思います。

 そして、コーチングの部分は「世界基準は何か」というのがキーワードです。その指導を受けることによって、努力次第では世界がすごく身近にあるという形にもっていければ、NBA選手が育ち、世界でもトップ10に名を連ねる可能性があると捉えています。

――20年の東京五輪、そしてその先も日本のバスケットボールが世界で結果を残すためには、Bリーグが重要な役目を担いそうですね。

 アルゼンチンは、1996年のアトランタ五輪まで44年間五輪に出られなかったのが、その8年後、04年の五輪で金メダルを取りました。これは日本にとって非常に勉強になる事例です。何より、アルゼンチンの飛躍の裏側には、84年に誕生したLNBというプロリーグをきっかけに強化育成プログラムが構築され、前進したという流れを確認できています。その影響を考えると、日本も16年にBリーグが開幕するわけですから、私はアルゼンチン男子代表がトライした道を、われわれの指標にしてもいいのではないかと思っているわけです。

 もちろん、理想と現実がありますし、アルゼンチンの場合は、リーグの育成強化のベースができたタイミングに、ちょうどマヌ・ジノビリやルイス・スコラといったゴールデンジェネレーションが重なったという流れがありました。そればかりは、コントロールできるものではないかもしれません。ただ、ゴールデンジェネレーションがいつ出てくるか分からない中でも、出てきたときのためにちゃんと準備できているということが大事なんだと思います。これが大枠の鍵で、(そういった選手が)出てきたときに準備が整っていれば、絶対に素晴らしい結果を出せると信じて取り組んでいきます。

東野智弥

日本バスケットボール協会 技術委員長
1970年石川県出身。学生時代からバスケットボールに励み、北陸高でインターハイ優勝などを経験。その後、早稲田大を経てアンフィニ東京(現埼玉ブロンコス)でプレーし、全日本実業団選手権大会2位入賞に貢献。現役引退後は、語学留学を経て、ルイス&クラーク大学のアシスタントコーチに就任し、カンファレンスチャンピオン・全米NAIAトーナメントベスト8となるチームの躍進を支えた。その後、三井生命ファルコンズを経て、早稲田大コーチと所沢ブロンコス(現埼玉ブロンコス)HC、車椅子バスケットボール男子日本代表アシスタントコーチなどを兼任。2001年からはトヨタ自動車アルバルク(現アルバルク東京)のアシスタントコーチに就任すると、チームをリーグ初優勝に導く。04年には日本代表アシスタントコーチに就任、06年、母国開催の世界選手権では悔しい経験もした。その後、レラカムイ北海道(現レバンガ北海道)HC、NBAミルウォーキー・バックスのサマーリーグ・アシスタントコーチ、車椅子バスケットボール男子日本代表の戦略コーチなどを歴任。14−15シーズンには浜松・東三河フェニックスをbjリーグ優勝に導く手腕を発揮すると、16年6月より20年間のコーチ業を離れ、日本バスケットボール協会技術委員長に就任した。

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