錦織、リオには「あんまり出たくない」 脇腹痛は深刻、五輪までに回復できるか
サーブを追えないほど悪化した脇腹痛
4回戦を途中棄権した錦織圭。痛めた左脇腹痛は深刻な状況となっていた 【写真:アフロ】
チリッチのサーブで始まった第1ゲームは、いきなり4連続のノータッチエース。時速185キロはチリッチとしては高速でもないが、そのサーブを追えない錦織の姿が故障の重さを物語っていた。ウオーミングアップのサーブ練習から弱々しく、この日の試合前の練習も、前日の練習も、サーブ練習は形ばかりで早々に切り上げていた。第1セット1−6、第2セットの1−5となったところで、コーチのマイケル・チャンがスタンドから棄権を指示した。
脇腹痛は、前哨戦のゲリー・ウェバー・オープンの1回戦でのこと。2回戦以降を棄権してウィンブルドンに備えた。しかし、この大会に入ってからも痛みは引かず、十分なトレーニングもできないまま、だましだまし、どうにか4回戦まで勝ち進んだこと自体、自分でも予想外だったと言う。
「どの試合もウオーミングアップから痛かったですが、痛みが3回戦の後から比べ物にならないくらい酷くなった。ドクターから、多少悪くなっても大事にはならない箇所だとは言われていたので、きょうは(筋肉が)切れるまでやろうかと思って試合に臨みました。ただ、あれで勝てるわけはなかったですが」
グランドスラムでなければ、欠場していたとも話したが、テニス選手の聖地とされるウィンブルドンで昨年に続いての途中棄権だけは避けたかっただろう。
「同じ大会で2度連続も棄権というのは情けないですね」
チリッチは錦織と2年前に全米オープン決勝を戦い、昨年は日本で一緒にエキシビションをやった仲だけに、3年連続のベスト8進出にも複雑な表情だった。
「錦織の状態はコートに出るまで知らなかった。ウオームアップで打っていないのに気付き、少し様子を見ようと思った。圭は本当に残念だったと思う」
五輪イヤーは過密スケジュール
メディカルスタッフと話し込む錦織。ジョコビッチ、ナダルらと互角に戦った疲労の蓄積が脇腹に出てしまった 【写真:アフロ】
錦織は今年の最低目標として、マスターズ1000での初優勝を挙げている。クレーコートのマドリードかローマで達成できていれば展開は変わっただろうが、そこをジョコビッチに阻まれ、この後のマスターズ・シリーズは、7月25日からのロジャーズ・カップ、8月15日からのウェスタン&サザン・オープン。そこを逃すと10月の上海までなく、ロジャーズ・カップとウェスタン&サザン・オープンの間にリオ五輪が開催されるという強行日程になる。ロジャーズ・カップまでの3週間、まずは体を休めて痛みを消すしかないが、果たして間に合うか。
今回の五輪では、プロ競技で参加の意義が問い直されている。テニスではドミニク・ティエム(オーストリア)、バーナード・トミック、ニック・キリオス(ともにオーストラリア)、フェリシアノ・ロペス(スペイン)が早々に欠場を表明し、112年ぶりに実施されるゴルフでもトップが続々と欠場を宣言。日本のエース・松山英樹も出場しないことを明らかにしていた。
「松山君が出ないというのを(ネットで)見て、僕もあんまり出たくないなと思いました。会うのを、楽しみにしていたので」
抱え込んだケガに過密スケジュールを重ね合わせたとき、五輪はともかく、再びコートに立ち向かう気持ちを取り戻すには少し時間が必要だろう。
「この大会では後先を考えずにプレーしてきました。メンタル面で大変でしたが、そのあたりが収穫だったと思います」
男子では第3シードのロジャー・フェデラー(スイス)、ノバク・ジョコビッチを倒したサム・クエリー(米国)、女子では第1シードのセリーナ・ウィリアムズ(米国)、第5シードのシモナ・ハレプ(ルーマニア)は勝ったが、第3シードのアグニエシュカ・ラドワンスカ(ポーランド)はドミニカ・チブルコワ(スロバキア)に敗れた。
(文:武田薫)
◆◆◆ WOWOW番組情報(PR) ◆◆◆
「ウィンブルドンテニス」
歴史と伝統の大会ウィンブルドンテニス。世界最高峰の試合を連日生中継でお届けする。
2016年6月27日(月)〜7月10日(日)
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ