「スポーツの祭典どころではない」 開幕まで1カ月、現地紙が見たリオの難題

サンパウロ新聞

大不況と政界汚職に揺れるブラジル

深刻な不況、汚職に端を発する政情不安などに揺れるブラジル。国民は白けてしまっているという 【写真:ロイター/アフロ】

 リオデジャネイロ五輪の開幕まであと1カ月に迫った。ブラジルのテレビをはじめ各マスコミは、聖火リレーを毎日報じてはいるものの「笛吹けど踊らず」で国民は白けている。ブラジルは1929年の世界恐慌以来、最悪の経済不況に陥っている上に「ラバ・ジャット」と呼ばれる政界汚職の摘発が続き、スポーツの祭典どころではないのだ。

 五輪会場は市内4か所に分かれており、競技施設はほとんど完成、遅れていた自転車競技トラック競技場もほぼ完成し、大会委員会に引き渡された。また、選手村も6月24日に開村式が行われた。大会関係者は「これで大会には支障がない」と胸を張る。だが、施設そのものは完成しても周辺のインフラ整備が遅れており、大会が始まっても工事中という箇所が至るところで見られるはずだ。

 2年前にブラジルで開かれたサッカーワールドカップの時と同じだ。競技場そのものはどうにか完成したものの周辺は工事が終わらず、赤茶けた土が露出していて、とても完成したとは言い難い様相だった。関係者にこのことを指摘すると、「競技さえできればテレビ放映はできるし、観客も試合を楽しめるから問題はないんじゃないの」と意に介さない返事が返ってきた。これがブラジル人の考え方で、「日本人はなぜ目くじらを立てるのか」と逆に不思議がられるぐらいだった。

海外からの観戦者は混乱必至

リオ五輪の開会式が行われるマラカナンスタジアム(右上)と、リオデジャネイロ名物の渋滞 【写真:ロイター/アフロ】

 インフラ整備で遅れているのは施設周辺だけではない。肝心の交通網整備が遅れているのだ。もともとリオデジャネイロ市は、山が海岸に迫る地形から主要道路が2本しかなく、朝晩の通勤時間帯は大混雑することで知られている。中心地からメイン会場のバッハ・ダ・チジュッカ地区まで通常1時間かかるのだが、交通渋滞がひどくなると3時間もかかる。

 こうした交通事情から、五輪の観客の輸送手段は公共交通機関が中心となる。このため、期間中は大会関係車両の通行を優先し、専用の車両通行レーンを設置する。ところが、いまだに全てが完成しているわけではなく、バッハ地区を通るBRTと呼ばれるバス高速輸送システムは完成しておらず、有名なイパネマ海岸からバッハ地区までの地下鉄4号線も6月29日に当初予定の2駅前まで完成したが、残りの2駅が開通にこぎつけられるかどうかは微妙なところだ。

 このままでは、地下鉄やバスは通勤時のような混雑が予想される。地理も分からず言葉も通じない観戦者が混乱するのは必至だ。

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著者プロフィール

1946年に創刊したブラジル・サンパウロの邦字新聞(週5回発行)。日刊の邦字新聞としては海外最大規模を誇る。日系社会の言論界をリードし、さらには文化事業で日本との架け橋を担う。

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