「スポーツの祭典どころではない」 開幕まで1カ月、現地紙が見たリオの難題
強盗、テロ、銃撃戦……治安の懸念
数日前には日本の民放テレビ局のクルーが強盗に襲われ、7月1日には貨物便で空輸されたドイツのテレビ局2局のスタジオ用機材が、空港からリオ市内へ運ぶ途中にトラックごと強奪された。同日、捜査していた警察がリオ市内で同貨物車が乗り捨てられているのを発見、積荷もそのまま放置されていたので実質的な被害はなかったものの、今後も同じような事件が起こることが懸念されている。
五輪へ向けて新たに開通した新型路面電車と、周囲を警戒する警察 【Getty Images】
警備は最重要課題であり、大会期間中は軍隊3万5000人、軍警察、市民警察、民間の警備会社等5万人の合計8万5000人体制で警備にあたる。これだけ大規模な人員が警備すれば、犯罪組織も身動きできず、治安は保たれるだろう。
だが、大会を狙ったテロが発生する可能性は否定できない。4月には、ブラジルの大手紙が、「ブラジル大統領府情報庁(ABIN)は、『イスラム国』(IS)のメンバーによる『我々の次の標的はブラジルだ』とのツイート内容を確認しており、ブラジルにおけるISの脅威が高まっている」と報道して一気に緊張が高まった。そして、6月16日にはABINが、ISに関連するとみられるポルトガル語のメッセージのやり取りがインターネット上で行われていると発表、警戒を強めていることが明らかになった。
ブラジルの国境警備は手薄でどこからも容易に侵入できるため、大会が終わるまで気を緩めることはできない。
ジカ熱はリオ周辺で感染拡大中
ジカ熱対策としてブラジル政府は2月、全土で「一斉駆除デー」を開催した。右から3人目は、弾劾裁判の設置が決まり5月に職務停止へ追い込まれたルセフ大統領 【写真:ロイター/アフロ】
6月20日には、ブラジル厚生省が、過去5週間に記録された小頭症が疑われる新生児の報告数において、昨年の報告開始以来最多を記録していた北東部を、リオ州やサンパウロ州が位置する南東部が上回ったことを明らかにした。厚生省が発表したジカウイルス感染者は南東部で5万4803件、北東部で5万1065件。南東部でのジカ熱のピークは昨年11月から今年2月の夏場となっている。五輪、パラリンピック期間中は冬場とはいえ、日中の気温が25℃を超えることも珍しくないリオ市では蚊がいなくなることはなく、危険は付きまとう。
問題ばかりが山積みだが、それでも五輪は開かれる。