元ロッテ中後、メジャー昇格へ奮闘中 NPB戦力外からのシンデレラストーリーへ

菊地慶剛

セカンド・チャンスの恩恵に

NPBのロッテには4年在籍した中後。通算37試合2勝2敗0S・25回3分の1、16奪三振、防御率5.68の成績を残している 【写真は共同】

 実はメジャーには昔から球界全体で、一度挫折した選手たちに“セカンド・チャンス”を与える環境が整っている。中後もその恩恵に預かったといっていい。

 同じダイヤモンドバックスに所属するデビッド・ペラルタ外野手など、最近の典型例といえるだろう。元々左投手だったペラルタは2回の肩の手術を経験して一度は現役生活を終えるしかなかったが、その後、野手転向を決意し独立リーグと契約。そこからトライアウトを受けダイヤモンドバックスとマイナー契約にこぎつけ現在に至っている。

 それだけではない。今回キャンプ中に中後と同い年でルームメイトだった投手がいるのだが、彼も元々野球でマイナーリーグに在籍していたが解雇され、その後投手に転向に独立リーグに在籍し、再びダイヤモンドバックスからチャンスを与えられている。このような状況はまったく珍しいことではなく、メジャーのすべてのチームで繰り返させているスカウティング・システムなのだ。

 残念ながらNPBのファーム組織はメジャーから比べれば明らかに小さすぎる。しかもファームでは試合数も少なく、現状でも選手が多すぎ均等に出場機会が与えられない状態だ。ホークスやジャイアンツなどは3軍制度を採用し、選手たちの出場機会を増やそうとしているが、それでもメジャーのようにセカンド・チャンスを与えられるような環境が整っているとは思えない。

 中後のみならず、ジャイアンツから戦力外通告を受けインディアンスとマイナー契約を結び現在もメジャー昇格を狙える位置にいる村田透投手の例もあるように、今のままだと彼らのような素材がさらに海外に流出してしまう。それはそれでNPBにとってはマイナスではないだろうか。

「久しぶりに野球を楽しみたい」

 いずれにせよ中後の起死回生のメジャー挑戦はスタートを切った。もちろんNPBでスターだった選手たちでも簡単には活躍できない世界最高峰のリーグだ。生半可な気持ちでそのマウンドに立つことはできないだろう。

「日本ではとにかく結果を求め自分にプレッシャーをかけすぎてうまくいかないことが多かった。欲が強くて三振を取りたいというアホな自分がいた。今はすべてを変えるつもりで来ました。こっちでは完全にタイプを切り替えてバッターの手元で球を動かし打たせるピッチングができれば、精神的にも楽になり、幅も広がると思う。今は焦らずに久しぶりに野球を楽しみたいです」

 新たなシンデレラストリーが生まれることを楽しみに待ちたいと思う。

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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