松田、立石ら敗れし実力者の思い 競泳日本選手権、それぞれの戦い
松田は個人種目で出場権を獲得できず
個人種目での代表内定を逃した松田丈志。第一人者としての面影はなくなっていた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
「2バタ(200メートルバタフライ)は今日のレースで引退です。今の自分の力は出せたと思います。ここ最近は2バタを泳ぐのが怖いと感じることも多くて、出なくてもいいかなとは思ったんですけど、自分をここまで育ててくれた種目だし、一番大事にしていた種目だったので、最後まで戦おうと思っていました」
レース後、松田は涙で言葉を詰まらせながら、この種目に懸けていた思いを語った。ロンドン五輪後、長年自身を指導してくれた久世由美子コーチの元を離れ、北島らを育てた平井伯昌コーチに師事。しかし、これまでのマンツーマン指導からチームとしての練習に変わったこともあり、フォームを崩してしまう。その後、再び久世コーチの元へ戻り、二人三脚でリオ五輪出場を目指した。
だが、年齢の影響もあったのか最後まで以前のような泳ぎを取り戻せなかった。得意だったラストの追い上げで加速できない。限界だと悟った。
「何をやってもダメですからね。自分で考えられること、周りからアドバイスをいただいたことをすべてやり尽くしました。それでも原因が分からなかった。そんな状態でしたけど、よくやったかなと思います」
幸い、松田は200メートル自由形で2位に入り、800メートルリレーのメンバーとしてリオ五輪に出場することになった。100メートルバタフライでも予選敗退に終わり、こだわった個人種目での代表権獲得はならなかったが、その分リレーでの完全燃焼を誓う。
「今大会まではバタフライにエネルギーを注いでやってきたので、それをこれからはフリー(自由形)1本に絞って、8継(800メートルリレー)では絶対にメダルを取りたいと思います。それが僕の最後の仕事です」