松田、立石ら敗れし実力者の思い 競泳日本選手権、それぞれの戦い

スポーツナビ
 4日から行われている競泳の日本選手権は、リオデジャネイロ五輪の代表選考会を兼ねていることもあり、連日ドラマが生まれている。出場権を獲得し、悲願をかなえた選手がいる一方で、夢破れ涙をのんだ選手も存在する。2004年のアテネ五輪と08年の北京五輪で2冠を達成し、5大会連続の出場を目指した33歳の北島康介(日本コカ・コーラ)は100メートル、200メートルの平泳ぎで代表権を獲得できず、現役引退を表明した。そして北島と同様、実績十分ながら思うような結果を残せなかったのが、松田丈志(セガサミー)、立石諒(ミキハウス)、山口観弘(東洋大)の3人だ。

松田は個人種目で出場権を獲得できず

個人種目での代表内定を逃した松田丈志。第一人者としての面影はなくなっていた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 31歳の松田は、北京五輪と12年のロンドン五輪で銅メダルを獲得した200メートルバタフライで4位(1分57秒14)に終わった。優勝した瀬戸大也(JSS毛呂山)、2位の坂井聖人(早稲田大)には3秒近くの差をつけられての完敗。第一人者としての面影はなくなっていた。

「2バタ(200メートルバタフライ)は今日のレースで引退です。今の自分の力は出せたと思います。ここ最近は2バタを泳ぐのが怖いと感じることも多くて、出なくてもいいかなとは思ったんですけど、自分をここまで育ててくれた種目だし、一番大事にしていた種目だったので、最後まで戦おうと思っていました」

 レース後、松田は涙で言葉を詰まらせながら、この種目に懸けていた思いを語った。ロンドン五輪後、長年自身を指導してくれた久世由美子コーチの元を離れ、北島らを育てた平井伯昌コーチに師事。しかし、これまでのマンツーマン指導からチームとしての練習に変わったこともあり、フォームを崩してしまう。その後、再び久世コーチの元へ戻り、二人三脚でリオ五輪出場を目指した。

 だが、年齢の影響もあったのか最後まで以前のような泳ぎを取り戻せなかった。得意だったラストの追い上げで加速できない。限界だと悟った。

「何をやってもダメですからね。自分で考えられること、周りからアドバイスをいただいたことをすべてやり尽くしました。それでも原因が分からなかった。そんな状態でしたけど、よくやったかなと思います」

 幸い、松田は200メートル自由形で2位に入り、800メートルリレーのメンバーとしてリオ五輪に出場することになった。100メートルバタフライでも予選敗退に終わり、こだわった個人種目での代表権獲得はならなかったが、その分リレーでの完全燃焼を誓う。

「今大会まではバタフライにエネルギーを注いでやってきたので、それをこれからはフリー(自由形)1本に絞って、8継(800メートルリレー)では絶対にメダルを取りたいと思います。それが僕の最後の仕事です」

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