佐々木監督「未来に向けることができた」 なでしこジャパン監督退任会見
女子日本代表の監督を退任することを発表した佐々木監督(右) 【スポーツナビ】
会見の冒頭で佐々木監督は「世界で戦い、結果もある程度出て、未来にさらに向けることができた」とコメント。「本当に満足し、充実した11年間をサッカーの指導者として経験することができた」とこれまでの監督人生を振り返った。
同席した日本サッカー協会の大仁邦彌会長も「佐々木監督の功績は本当に大きかったと思いますし、今後もわれわれはこのスタイルを貫いていくべきだと思っている」と感謝の言葉を述べた。
連係、連動の質を生かしてやってきた
佐々木則夫(女子日本代表監督)
大仁邦彌(日本サッカー協会 会長)
大仁 先般、五輪予選が終わり、3月10日に佐々木監督より辞任したいという申し出を受けました。そのあと理事会で報告をし、正式に(佐々木監督の辞任が)決まりました。今回の五輪予選は大変残念でしたが、これまでの佐々木監督の成績は本当に素晴らしいものであります。2011年のドイツでの女子ワールドカップ(W杯)での優勝、ロンドン五輪やカナダW杯での準優勝と、本当に素晴らしい成績を挙げてくれたと思っています。
今回は残念ですが、それによってこれまでの成績がおとしめられるものではないと思っています。特に、なでしこスタイルと言いますか、日本のサッカーは世界で戦うことができるんだと。逆に言えば、今はなでしこスタイルを世界がまねしてきている。女子のサッカーを佐々木監督が変えたと思っています。それによって今回の五輪予選も各国が振興してきたことによって、こういう成績になったと言えるかもしれません。佐々木監督の功績は本当に大きかったと思いますし、今後もわれわれはこのスタイルを貫いていくべきだと思っています。
本当に佐々木監督には、しばらく休んでいただけるのかは分かりませんが、感謝を申し上げたいと思います。
佐々木 女子の指導者として携わって11年。そして監督として9年間、本当にこれまで選手たちと、そして日本サッカー協会とともに世界を目指して仕事ができた。そして、これまでの中で世界で戦い、結果もある程度出て、未来にさらに向けることができた。最終的には、大切なリオ五輪の結果には至りませんでしたが、僕自身は本当に満足し、充実した11年間をサッカーの指導者として経験することができた。これは僕の大きな宝物として、今後どういう道に行くかまだ分かりませんが、いずれにしても良い経験として自分自身の人生の一つになると確信して、新たなステージに向けて頑張っていきたいと思っています。
――これだけ結果を残せた要因をどのように考えているか?
大仁 日本の女子全体のことだと思いますが、世界と比べて技術レベルは高いと思います。また、全員で攻撃、守備、チーム戦術を理解しみんなで同じような考えで動ける。そういったところがこれまでのなでしこの強さだったと感じています。
佐々木 U−19の代表コーチと指揮をさせていただいたときに、女子のクオリティーの高さ、そしてボールを持っていない時の連係、連動の質など(が高いと感じた)。これを生かしていくことによって、攻撃、守備が非常に進化すると感じました。
NTT関東というアマチュアのチームを指揮していた時に、高いレベルではない中で連係、連動していくことである程度の結果を出すことができた。その中でオファーをいただき、なでしこの選手たちを見たときに、フィジカルはあまりないが連係、連動の質があるし、技術もまあまあある。その中で一助になるんじゃないかということで、当時はまだ大仁女子委員長だった頃にオファーをいただき、こういった女子の世界に入ってきたわけですが、そういったところを生かしてこれまでやってきました。なんとか融合しながらやってこれたのではないかと思います。
――女性のチームを率いるうえで、特に気を付けていたことは?
佐々木 みなさん男性が女性を指揮するときに「大変じゃないか?」と口にするのですが、実際には選手たちひとりひとりに高い志がありましたので、僕自身は男性を指導するのと変わらなかったと感じています。とはいえ異性ですから、ある意味そこは一線を引くことは現実的にありましたけれども、選手たちも気を配ってくれたうえでのこれまでの活動だったと思います。別に鎧を着て、片意地を張って指導したつもりはないので、残念ながら僕はそんなに女性だからということで大変だったことはありません。
個を生かすための戦術を徹底していかなければいけない
佐々木 現実的にドイツのW杯後、ロンドン、年々の世界大会で本当に各国の世界レベルが、個の質も技術も上がってきています。戦術的な要素も、以前はアバウトな状況の攻守にわたっての戦術だったのが非常に密になってきた。そういう意味でわれわれも攻守にアクションする質を高めて世界で戦っている中で、個の質を上げて組織的に融合していかなければいけないというのが問われます。現実的に、今の段階ですと本当に上げていく、若い選手たちも含めて現在進行形で成長させているという状況で、それをチームに合わせたときに世界レベルにあるかといえば、なかなか厳しいところが現状ではまだまだあると思います。
チーム戦術的な要素の中で、相手の個のパワー、テクニックをぼかしながら状況を見ながら戦うという中では、カナダのW杯では非常に厳しいであろうと踏まえながら戦い、何とか1点差ということを連続した試合の中で勝ち得た。そういうところの思考を変えたところがあって、まさしくアジアの状況でもレベルは踏まえて感じていました。ピッチに水をまいてスピーディーなサッカーをという中でトライしたときに、連係した守備で止める蹴るの質が上がってきたのは現実にアジアでもある。そこをかいくぐられてしまうと、どうしても後ろは状況が厳しくなって下がらざるを得なくなり、自分たちがイニシアチブをとろうと思ったところが、第1戦などは特に守備にわたっても展開にしても相手にイニシアチブを取られた状況になったと思います。
それは覚悟はした中で準備したつもりでした。もちろん、その中で結果を出さないといけないので、セットプレートの工夫だったり、しっかりとボールを動かすんですけれども、基点をもっと高い位置に取るにはシンプルに高い位置を取るポイントがあるよということも戦略としては準備はしっかりとしたつもりでした。しかし、それが浸透せずに、第1戦、第2戦、第3戦は結果として、自分たちのイニシアチブを取れなかったと思います。
これからは個の質ということと、世界の進捗が上がってきているので、チームの戦術としても個を生かすための戦術を徹底していかなければいけないということを痛感したアジアの予選、そして先日のカナダでのW杯だったと思います。