佐々木監督「未来に向けることができた」 なでしこジャパン監督退任会見
さまざまな局面の中で勉強させていただいた
「本当に満足し、充実した11年間をサッカーの指導者として経験することができた」と語った佐々木監督 【スポーツナビ】
佐々木 これまでのいろいろな試合ですね。僕自身、U−19のチームも兼ねて代表を見た時期もあって、代表の若い世代への移行という部分の中では、理想的な環境を与えていただきながら、若い世代のアジア予選、世界大会も経験して、それをなでしこにつなげる仕事というのは本当に理想的であり、実際に代表に移行するにあたっても良い機能をしたなあと思います。そういう環境を与えていただいたことを感謝します。その時は365日休みがなかったわけですけれども。
実際にこういった経験をして、まさかこういう退任会見でこんなに多くのメディアの方に来ていただけるなんて(思いませんでした)。最終的にリオの結果は出なかったにしても、会長に隣に座っていただいて退任会見をしていただくということ自体も。この1週間は結果が出なかったことが、日に日に痛切な思いもあるんですが、結果が出てしまって切り替えた中では、今後の大きな財産は選手、協会、サポーターの皆さん、多くのメディアの方とも接しながら、さまざまな局面の中でいろいろなことを勉強させていただいた、それが一番の財産だと思っています。
今後もなでしこは世界に行った中で結果を出すのは非常に厳しいと思うんですけれど、世界大会に出られるのはW杯にしても五輪にしても、可能性は十分高い位置にあると思います。新たな指導者にバトンを渡し、陰ながら応援をし、世界で戦うのは厳しいですが、ぜひ皆さんも同じサッカーファミリーとして後押しをしていただければと切に思います。
――8年以上にわたって監督を務めてきた間、家族のサポートは不可欠だったと思う。今、家族にどんな言葉をかけたいか。
佐々木 意外に現場で指揮している方がハラハラドキドキなんて感じないんですね。テレビやスタンドで応援している家族の方がハラハラドキドキはすごいんだと思います。一度、2011年のW杯で優勝した時に、妻がスタジアムで腰を抜かしたんですね。そのぐらい緊張とエネルギーを使って応援してくれていた家族には、本当に感謝する次第ですね。本当にありがとう、ということです。娘もいますけれども。娘も一応言っておかないと、怒られちゃうので(笑)。
――(五輪最終予選で)北朝鮮がどうしてあれほど不振だったのかと思うのだが、最後に北朝鮮と対戦してどのように感じたか?
佐々木 彼女たちのチームは若いですから、いろいろなプレッシャーがあった中で、たぶん競った時に力を発揮できなかったのかなと思います。われわれのチームとの試合だけでなく、他のチームとの戦いでも。若くて可能性のあるチームだったと思いますが、現実的にはまだ試合慣れとか、世界大会に前回出ていなかったことなどがあるのかなと思います。
これからについては考えていない
佐々木 今は真っ白な状況です。これからについては考えていません。少し時間を置いて、私が選択できる幅がどれだけあるかは分かりませんが、どんな形であっても女子サッカーの発展に寄与したいと思っています。
――次の監督にアドバイスできることはあるか?
佐々木 日本の女子サッカー選手たちは可能性を秘めています。ですが、世界各国の女子に対する強化も進み、選手たちも進歩しています。世界と日本の足元をしっかりと確認し、良いチームを作ってくださいということです。
私が監督としてスタートした頃は、世界ランキングが11位ぐらいだったと思います。そして、20位ぐらいのチームに対しては明らかな差があったんです。それが今、日本は4位ですけれど、20〜30位ぐらいのチームでもかなり良くなってきています。世界で戦う上で、層が厚くなってきたという現実があります。それは皆さんも現状を見て感じていただいていると思いますので、そこを見据えながら良い準備をしてフランスのW杯、そしてなんといっても東京での五輪で活躍してほしいです。間接的なことであったり、遠くからでも何かあればアドバイスはしたいと思います。これから大変なので、メディアの方はあまりプレッシャーをかけないようにしてもらいたいです。
――今後、日本の女子サッカー界が世界と戦うために、どんなことが必要だと思うか?
佐々木 現在は少子化でもありますし、サッカー協会がいろいろな意味で強化をし、手を広げています。サッカーに携わる女の子たちの環境を前向きに考えてくれている。そこが始まらないと、サッカーは足でやるスポーツですから急にトップになって技術を学ばせても難しいと思います。
そういった意味で、ジュニアの時期から普及活動をやってくれていますので、それの継続は必要だと思います。各年代の代表強化もやってくれていますので、その辺りをうまくトップにつなげてほしいです。継続的にやっていることを、世界を見据えながらこれからもやってもらえればと思います。
笑顔は自分のパーソナリティー
大仁 現場の要望に沿ってできるだけのことをやりました。これをやっておけばということはないです。
――新たななでしこたちに、今だから伝えたい言葉や託したい思いがあれば教えてほしい。
佐々木 これまでの選手たちには、若干頼りなさそうな私でしたけれど(笑)、よくこれまでついてきてくれたと思います。選手たちの包容力・頼もしさを感じながら、厳しくもありながら、楽しくやってくることができました。「ありがとう」ということだけです。これからも、世界を目指して精進してほしいと思います。頑張ってください。
――佐々木監督は笑顔も印象的だが、チーム作りの上で笑顔をどう意識していたのか?
佐々木 笑顔は自分のパーソナリティーなので、なんとも言えないのですが……。時には演技をして笑うこともありますけれど、選手たちの笑顔の方が素晴らしかったと思います。そういう意味で、なでしこジャパンと僕自身は厳しいときもありましたし、最後は笑顔で終わりたかったです。最後の試合でほんのり笑顔を見ることができて、ほんの少し救われました。
――次の監督について、高倉麻子さん(現U−20女子日本代表監督)などの名前が挙がっている。高倉さんの適正についてどう考えるか?
佐々木 まだ決まっていない高倉さんがどうかは答えられませんけれど、非常に良い指導者だと思います。
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