監督の交代劇が少ないエールディビジ フィテッセのマース監督の行く末は!?

中田徹

監督の交代劇が少ない今季

監督の交代劇が少ないエールディビジ。フェイエノールトが7連敗した際もファン・ブロンクホルスト(写真)は更迭されなかった 【Getty Images】

 もともとエールディビジは監督の交代劇が少ないリーグだが、今季はわずか4人と際立って少ない。フィテッセのペーター・ボスが今年1月、マッカビ・テルアビブのテクニカル・ディレクターを務めるジョルディ・クライフから熱烈な誘いを受けてイスラエルへ去ったが、成績不振の責任を取らされてクラブを離れたのは、アルフレッド・スフローダー(トゥエンテ、現ホッフェンハイムコーチ)、ヘンク・デ・ヨング(カンブール)、ドワイト・ローデウェーヘス(ヘーレンフェーン、現ズウォレコーチ)のみ。

 最下位に定着しているデ・フラーフスハップですらパニックにならず、ヤン・フレーマン監督への厚い信頼を崩さない。この腰が座った姿勢が、前半戦17試合でわずか勝ち点5だったチームが、後半戦の9試合で勝ち点9獲得という成長につながった。1部残留の可能性は、まだまだ彼らにも残っている。

 ジオバンニ・ファン・ブロンクホルストは12月20日のNEC戦から7連敗という暗黒の時期をフェイエノールトで過ごしていたが、それでも更迭の声は聞かれなかった。41歳の青年指揮官に対して、クラブはディック・アドフォカートという百戦錬磨の名匠をアドバイザーにつけることで、この難局を乗り切ることに決めた。その結果、明らかにファン・ブロンクホルストの采配や振る舞いに変化が生まれ、最近になってようやくフェイエノールトは上向きの気配を見せ始めている。

 今季前半戦を15位という残留圏ギリギリで折り返したローダJCも動かなかった。ダリイェ・カラジッチ監督に厚い信頼を置く首脳陣は、チームの編成に難ありと認めて冬の移籍市場で実に8人もの選手を補強(そのリストにはスポルティング・リスボンから柏レイソルに復帰した田中順也も載っていたという報道があった)。カラジッチは新加入選手を積極的に抜てきしながらチーム力をアップさせ、ローダJCは1部残留安定圏への逃げ込みに成功した。

フィテッセのロブ・マース監督の微妙な立場

 オランダリーグは26節を終えた。ここまで生き延びた監督の首はそう簡単に切られることはないだろう。ただし、フィテッセのロブ・マースだけはちょっと雲行きが怪しい。「オランダで最も面白いチームを作った」という高評価を得たボスの後継者として1月、コーチから昇格したマース新監督は就任以来、下位チームに対する取りこぼしが目立ち、試合内容も明らかに物足りない。第25節のビレムII戦で0−1で負けた際には、白いハンカチが観客席から振られた。

 マース監督の契約はわずか半年。つまり、フィテッセはマースが本当に監督の器かどうか試用期間を設けたのだ。指揮官への風当たりはファンのみならずメディアからも強く、このままでは落第の烙印(らくいん)を押されるのは必至。そのため、3月6日のローダJCとのアウェーゲームは、チーム全体に緊張感が走っていた。左サイドバック(SB)として前半、ベンチサイドでプレーした太田宏介は述懐する。

「焦っているのか分からないけれど、開始早々から大分(監督が)ガアガア言っていた。細かいポジショニングを散々言われ、『分かっているよ』と思って、我慢しながらプレーしました」

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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