なでしこを狂わせた勝利への焦り 技術を封じられ、中国のフィジカルに屈す
リオ行きの可能性はほぼゼロに
なでしこジャパンは中国に敗れ、リオ五輪出場が絶望的となった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
試合内容を振り返ってみる。なでしこジャパンは韓国戦で先発落ちした鮫島彩、阪口夢穂、中島依美の3人を再びスタートから起用。韓国戦で「古傷が心配なので大事を取らせた」(佐々木則夫監督)というのは、おそらく鮫島と阪口のことだろう。体調は万全とはいえないが、この日の勝利のためには彼女たちの力が必要だった。
対する中国は、右サイドバックの5番ウー・ハイイエンが今大会初先発。左サイドハーフの12番・ワン・シュアンとFW20番ジャン・ルイが初戦以来の先発となった。中国は第2戦の北朝鮮戦でほとんどゲームを支配されたが、後半アディショナルタイムでPKを獲得して1−1の引き分け。勝ち点1を手に入れていた。日本対韓国と同時刻に行われていたこの試合を取材した同業者は「これで中国に勢いがつかなければいいけれど……」と、心配そうな口ぶりで話していた。
「勝たなければならない」なでしこの焦り
自陣でのボール回しもまずまずだった。田中と熊谷紗希の両センターバックが横に広くポジションを取り、GK福元とMF阪口を前後に置いたひし形の陣形で相手のプレスを分散。近賀と鮫島を高い位置に上げて攻撃を組み立てていた。ところが14分、中国のスローインからボールを奪い返したなでしこは、川村のバックパスを田中が処理しきれず、中国に先制ゴールを許す。
慌てず、落ち着いて試合に入れていたが、一瞬の隙から失点を喫したことで、「勝たなければならない」なでしこは、個々のプレーにわずかながら焦りが出始めた。34分には横山が良いタイミングで相手の裏を取ったが、ワンタッチ目がわずかに流れ、シュートは打てずじまい。その後の横山の飛び出しに対しては、中国もカバーリングで対処するようになった。
後半に入ると、いきなり宮間のミドルシュートでなでしこが反撃の姿勢を見せる。だが、ゴールネットを揺らしたのはまたも中国だった。この日の中国の攻撃のキープレーヤーは、右サイドハーフのグー・ヤーシャだった。左サイドから攻め上がると、ペナルティーエリア付近でコースを変えて、逆サイドのグー・ヤーシャがシュート。中国は、この日何度か試みた形がようやく実り、後半13分に追加点を挙げた。
なでしこはその7分後に横山のゴールで追い上げたものの、追加点は遠く、そのまま1−2で敗戦の笛を聞いた。