なでしこを狂わせた勝利への焦り 技術を封じられ、中国のフィジカルに屈す
徹底的にマークされた宮間と大儀見
佐々木監督は今大会に向け、得点力向上を目指すトレーニングを重ねたが、改善には至らなかった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
佐々木監督は今大会に向け、得点力向上を目指し、シュートの手前のプレー、さらにその一つ前のプレーの引き出しを増やすためのトレーニングをチームに課した。ワンツーを使ったり、ボランチが斜めに走り込みペナルティーエリア内でボールを受けたり、その試みは確かに見られた。エリア内に入ってくるボールには相手DFも視線を集中させてしまうので、エリア内で一度ボールの軌道を変え、決定的なシュートに結びつけようとする狙いは正しかったはずだ。
だが実際には、そのようなプレーからの得点は3試合を通じて生まれなかった。
「3試合とも、プレーしていてかなわないと思う相手ではなかったので、サッカーの怖さ、難しさを感じています」
宮間が試合後、そう言葉にしたとおり、相手に歯が立たないとは感じなかった。昨年のW杯準優勝チームの、持ち前とする技術力が、急に落ちたとも思えない。ただ、オーストラリアや韓国も含め、対戦国はなでしこに対する守備の狙いをはっきりさせていた。ボールの出どころ、特に宮間に対して縦のコースを徹底的に切ってきて、ボールの受け手となる大儀見にもかなり厳しいマークがついていた。攻撃の中心である2人の自由を奪われたことが、ゲーム運びで後手を踏む原因になった。意図する形を作る手前の段階で、なでしこは自信を持っていたはずの技術を封じられていたのだ。
わずかに可能性は残ったが……
この中国戦に敗れたことで、なでしこジャパンは残り2試合を連勝しても勝ち点は7に留まる。すでにオーストラリアが勝ち点9を挙げており、なでしこジャパンに残されたリオ行きの可能性は2位通過のみ。なでしこジャパンが2位に入れるのは、下記の条件がそろった場合のみだ。
(1) 日本が2勝
(2) 中国が2敗し、得失点差で日本を下回る
(3) 北朝鮮がオーストラリアに引き分け以下
(4) 韓国が中国に勝ち、ベトナムに引き分け以下
わずかでもチャンスが残されている限り、なでしこジャパンは最後まで全力で戦うに違いない。だが、現実にこれらの条件がそろう可能性は、きわめて低い。