日の当たる舞台に戻りつつあるハーフナー ゴールを決め続け、日本代表復帰を目指す

中田徹

11分間で1ゴール2アシストを記録

ハーフナーはエクセルシオール戦で1ゴール2アシストを記録し、逆転勝利に大きく貢献した 【VI-Images via Getty Images】

 ADOデンハーグのサポーターには「ハーグス・クワティールチェ(ハーグの15分)」という儀式がある。このチームは、残り15分の頑張りを伝統にしており、スタジアムの時計の針が75分を示すと「ハーグス・クワティールチェ!」というお決まりのチャントが始まるのである。

 現地時間2月14日のオランダリーグ第23節、エクセルシオールとのアウェーゲームで、「ハーグス・クワティールチェ」の掛け声が起こった時、ADOデンハーグは1−2とビハインドを負っており、試合内容も全く芳しくなかった。今季のADOデンハーグはサイドアタックからクロスをハーフナー・マイクに入れる攻撃が魅力のチームだが、この日は全く機能せず。また、中盤の構成も悪く、ハーフナーにボールが収まらなかった。そこでヘンク・フレーザー監督は77分、まもなく19歳の誕生日を迎える長身ストライカー、デニス・ファン・デル・ハイデンを投入し、前線でハーフナーとツインタワーを組ませ、飽くなきロングボール攻撃を仕掛けた。

 ツインタワー形成から26秒後、ハーフナーがロングボールを胸で落とすと、ファン・デル・ハイデンが左足を振りぬいてゴール。ADOデンハーグが2−2に追いついた。するとチームに勢いがついた。86分には味方のクリアボールを拾ったファン・デル・ハイデンが、ハーフナーとのワンツーからエクセルシオールのディフェンス網を破り、今度は右足でシュートを決めて逆転。試合終了直前にはハーフナーがコーナーキックをヘッドで合わせて4−2とした。「ハーグス・クワティールチェ」の伝統は生きていたのである。

 わずか11分間で1ゴール2アシストを記録したハーフナーは、新たな相棒ファン・デル・ハイデンの誕生に「すごいデビューマッチを見てしまったな。まだ一緒に練習したことがないんですよ。うちはけが人が多く、それで今日、彼がリザーブチームから上がってきた。ある意味、彼と初対面ですよ。鳥肌モノでした。俺は2アシストという形。彼のデビューゴールは俺がアシストした」と興奮冷めやらず。ファン・デル・ハイデンの2ゴールデビューのインパクトは、今季の開幕戦、対PSV戦のアディショナルタイムで、味方GKマーティン・ハンセンが決めた2−2の同点ゴールに匹敵するものだと、ハーフナーは述懐した。しかし、ベテランの域に達した194センチのストライカーは気を引き締めるようにこう言う。

「やっぱり年老いたみんなで彼を調子に乗らせないといけない。しっかり抑えるところは抑えて、怒るところは怒ってね。やっぱり、いきなりチャンスをものにする選手は“持っている”と思うので、ADOにとってはゆっくり育てていくことになると思います」

辛かった日々もキャリアの肥やしに

 J1、J2、オランダリーグ、フィンランドリーグで積み重ねたゴールは101になる。しかし、今から1年前のハーフナーは所属クラブがなかった状態。フィテッセで2年半やり切り、スペインのコルドバに新天地を求めたものの、思うような活躍ができないうちにベンチ外となり、さらにはスペインでのビザが整っていなかったことも判明した。わずか半年でコルドバと契約を解除したハーフナーは、3カ月近く浪人の身となったのである。

 昨年3月から半シーズン過ごしたヘルシンキでの日々を、ハーフナーはあまりポジティブに語ろうとしない。スペインリーグはノーゴール、フィンランドリーグは4ゴールと、彼の100ゴール達成に占める割合はかなり低い。ハーフナーは表舞台から消えてしまった。だが、辛かった日々もその後のキャリアの肥やしにはなったのではないだろうか。

 フィテッセでの実績を買われて今季から加入したADOデンハーグでは、チームリーダーとしての自覚が十分で、1月24日のカンブール戦(2−1)のように後半開始から突然、魂のこもったプレーを見せ、チームの逆転勝利に貢献したこともある。そんな姿を見ながら、リオ五輪のオーバーエイジ枠で彼を入れればどうだろうと思うことがしばしばあった。日本五輪代表に新たな攻撃のオプションが増えるだけでなく、本来はシャイながらも感情を込めて話すこともあるハーフナーは、若手にも良い影響をもたらすのではないかと。本人は、「自分が本当に出たいのはワールドカップ。まあ、五輪は家でビールでも飲みながら見てますよ」と言って、オーバーエイジには関心なさそうなのだが。

あらためて語った日本代表への強い思い

日本代表について、ハーフナーは「選ばれたいです」と強い思いを語った 【写真:アフロスポーツ】

 オランダリーグで復活したハーフナーを昨年12月、日本サッカー協会のスタッフが視察に訪れたが、両者は試合後、会うことがなかったという。しかし、2月6日のローダJC戦(2−2)はヴァイッド・ハリルホジッチ監督自ら京セラスタディオンに足を運び、試合が終わるとハーフナーとじっくり話し合った。ローダJC戦のハーフナーはボールタッチも少なく良い出来とは言えなかったが、それでもコツコツとゴールを重ねている活躍をハリルホジッチ監督は高く評価している。やっと、ハーフナーも日の当たる舞台に戻りつつあるのだ。

「日本代表はいつも選ばれたいと思っています。今シーズンは結果が出ているし、候補として名前が出てきているので、しっかりこれからの試合も結果を残していければ選ばれるはず!?」と言葉を濁した後、ハーフナーは続けてキッパリ「選ばれたいです」と言い切った。

「1年消えていたのは、やっぱりマイナスでしかなかった。今はまたオランダに戻ってこられて結果も残して、また(日本代表に)選ばれる手前まで来ている。しっかり続けたいです」

 今季12ゴール。得点王争いでもPSVのルーク・デ・ヨング(17ゴール)を射程に捉えるハーフナーは、日本代表復帰を虎視眈々(たんたん)と狙っている。
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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