手倉森「勇気と感動を日本へ届けられた」 五輪最終予選 韓国戦後の監督会見

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カップを掲げる手倉森監督。「勇気と感動を日本へ届けられた」と勝利を喜んだ 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 サッカーU−23日本代表は30日、カタールのアブドゥラー・ビン・ハリファ・スタジアムで韓国代表とのリオデジャネイロ五輪アジア最終予選兼AFC U−23選手権・決勝に臨み、3−2で勝利。アジア王者に輝いた。

 日本は序盤から韓国に主導権を握られ、前半20分に先制点を許すなど苦しい展開を強いられる。後半開始からFWオナイウ阿道に代えてMF原川力を投入し、流れを変えようと試みるも、直後の2分に2点目を決められ0−2と追い込まれた。しかし、15分に浅野拓磨を投入すると流れが一変。22分に浅野、23分に矢島慎也と連続ゴールを決めて一気に同点に追いつくと、36分に再び浅野が決めて逆転に成功した。

 試合後、手倉森誠監督は「選手たちにはもう一度、自分たちの勇気と感動を日本へ届けようと話していました。まずそれを届けられて良かった」と優勝という結果に胸を張った。一方で8月のリオ五輪に向けては「ありとあらゆる能力を高めないといけない」と気を引き締めていた。

選手たちが耐えどころを理解してきた

 ドラマチックだったなと思います。日本に優勝を届けられて良かったです。選手たちにはもう一度、自分たちの勇気と感動を日本へ届けようと話していました。まずそれを届けられて良かったと思います。

 ゲームプランは、後半に仕留めて2−0で勝つというのが私の頭の中にありました。お互い先制点を取りながら勝ち上がってきたチームでしたが、もし取られたらという話も選手たちにはしていました。後半には韓国の足が止まるので、後半勝負だという話もしていました。まあ、ただ、前半の失点、後半の早い(時間での)失点と、まさか2点差をつけられるとは思っていなかったです。でも思った以上に、こちらの開き直りからの仕掛けが良くて逆転することができました。

 2失点目は私の責任でした。後半の頭からシステムを(4−4−2から4−3−3に)変えてメンバーも代えました。少し耐える時間を作り、終盤にまた2トップに戻して逆転できればと思っていたのですけれど、チームの重心が少し後ろに下がってしまい2失点目を喫してしまいました。そのあと逆転までたどり着けたのは韓国が3点目を逃してくれたというところも非常に大きいと思います。ただ、あれだけ外してくれると「こっちに(流れが)来るな」という思いもありながらやっていましたし、全然負ける気なく、ゲームをできていたからこそ、ひっくり返せたのかなと思います。

――このチームが公式戦で逆転勝ちするのは初めてのことだと思う。それが決勝で出た要因は?

 韓国が今大会で見せてきた(選手が)密集しながら仕掛ける攻撃に対しては、手を焼くと思っていましたし、失点も覚悟していました。ミーティングでは選手たちに「点を取られても」という話もしていました。逆に韓国は今大会で終盤に、常に失点してきたところがあるので、逆転勝ちもあり得るのかなあという期待もしていました。もし点を取られなければ2−0(で勝ちたい)という気持ちでいました。選手たちがゲームでの「耐えどころ」をものすごく理解してきたと思います。劣勢時のしのぎ方、守るところは守りに徹して攻撃の機を待つ。そういうメンタリティーが備わってきた、成長したと感じる部分です。

――アジア王者として臨むリオ五輪について。

 優勝はしましたが、五輪での戦いを見据えたら、まだまだ足さなければいけないところがあると私も選手たちも気付けたのではないかと思います。

――浅野にはどんな指示をして送り出したのか?

 相手の6番(中盤の底でプレーしていたパク・ヨンウ)の脇でボールを受けることができれば起点になれると思いました。あとは相手が攻勢に出ているので、ボールを取った瞬間に裏へ抜けられる。点を取りにいけという話をしました。

――今大会はフィジカルコンディションで勝っていた。全試合で走り勝ったと思うが要因は?

 まずJリーグが終わってから、メンバーの1シーズンでの出場率などを計算して、疲労がどのくらい残っているのかを見ました。あるいはあまり試合に出ていない選手たちは鍛えなければいけないということを考えました。インディビジュアル(個別)に1年の疲れ具合をチェックをして、石垣島(で12月下旬に行った直前合宿)では(走りのトレーニングの)タイム設定などもそれぞれ変えて、なおかつ大会期間が長いので焦らないように、ピークは決勝トーナメントに持っていくようにということを早川(直樹)コンディショニングコーチとやって来て、それがうまくいきました。

 戦力的にも2チームできるメンバーがそろっていたので、ターンオーバーも考えていました。そうなれば、あとは飯だなと。協会の協力でシェフも帯同できて、コンディションという意味では心配なくやれた大会だったと思います。そこには早川コンディショニングコーチの(試合へのピークの)持っていき方が本当に的確でした。

 いろいろな検査もしてきました。唾液を使った疲労チェックだったり、尿検査だったり、血液検査だったり。本当にそういうのを情報としてしっかり処理して、選手たちのコンディションを見極めた中でターンオーバーをやってきました。

間違いなく可能性のある選手たち

――前半はかなり韓国の出足が良く、ほぼ完敗に近い内容だったと思う。ハーフタイムにどういう声を掛けたのか?

 前半について、完敗しているとは思っていなかったです。自分たちがボールを取って収まるところで収まっていれば、最終ラインを破るところまでは何回かいけていました。あれがジャブになってくるなと思っていました。これはつないでいけるなと思ったので、ボールが収まらなかった(オナイウ)阿道を代えて(原川)力にしました。もう一度相手の攻撃をしのいでから、押し出ていこうかと思っていたら、タイミングが悪くて2点目を取られた。そこから2トップに戻すまでは、ちょっとこてんぱんにやられたなと。

 ただ、何となくまた押し返せるような気配はありました。韓国の(スタミナが)最後に落ちてくるところと、こちらには交代の駒があるというところで、何となくひっくり返せそうだなと思いながらやっていたので、落ち着いていました。

――浅野はここまでスーパーサブとして起用しながら結果を出せていなかったが。

 浅野には常々「大事なところでゴールは取れるはずだ」という話をしてきました。それが今日だったんだなと。ただ、「(点を)取りたい、取りたい」という焦りだけは禁物でした。彼には十分な時間が必要だなと思い、今日は出場時間を30分与えたら結果を出してくれました。

――リオ五輪本大会に向けての課題は?

 ありとあらゆる能力を高めないといけません。それは選手も気付いていると思うし、僕も感じています。攻守両面においてまだまだ高めないといけないし、本当に全部(が課題)だと思います。

――今大会で、選手たちに気付かされたものはあるか?

 一緒に長く生活していて、彼らの本当に高まりたいという意欲を毎日ビシビシ感じていました。間違いなく可能性のある選手たちだなというところを強く感じました。だからこそ、やってのけてくれたのだと思います。
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