錦織vsジョコ、勝敗を分けたポイントは?=全豪OPを日体大・森井氏が解説

スポーツナビ
 テニスの全豪オープンは26日、男子シングルス準々決勝が行われ、世界ランキング7位の錦織圭(日清食品)は同1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)に3−0(3−6、2−6、4−6)のストレートで敗れ、準々決勝敗退となった。

 ここまで好調の錦織だったが、前回王者を相手にミスが続き、第1、第2セットと連続で失う。後がない第3セット、錦織は第2ゲームでいきなりブレークに成功し、反撃を狙ったが、続く第4ゲームをジョコビッチがすかさずブレークバック。その後1ゲームずつブレークし合うが、第7ゲームでジョコビッチが3ゲーム連続でブレークに成功。そのまま逃げ切られ、日本男子84年ぶりとなる4強入りはならなかった。

 この試合を日本体育大テニス部監督の森井大治氏が解説した。

自滅したワンゲームが分岐点に

全豪オープンの準々決勝で惜しくも敗れた錦織。出だしは悪くなかったのだが…… 【Getty Images】

――今日の試合を振り返って?

 錦織選手は出だしは良かったので、ジョコビッチ選手の調子が上がらなかった第1、第2セットでもう少し(ポイントが)取れればチャンスはあったのかなという感じですね。第1セットの第6ゲームでブレークされたのが大きかったですね。40−0から(錦織選手のミスなどで)ジョコビッチ選手が何もしないまま、デュースまでいってブレークされました。それ以降ミスが急に増えていったので、あのゲームがおそらくターニングポイントだったと思います。やはり相手が強いので、しっかりと良いプレーをしないといけないという中、自分のミスでブレークされたのが尾を引いた形だと思います。

――錦織選手のプレー自体はいかがですか?

 良いポイントもあったのですが、フォアのミス、アンフォーストエラー(凡ミス)の数が少し多かったと思います(試合全体で54)。もちろん無理をしないといけないという部分で多少のミスは仕方ないのですが、それでもいつもよりは多かったですね。ジョコビッチ選手のボールが深かったりして良い時は仕方ないのですが、そうでない時も惜しくもアウトというようなミスが目立ったので、そういった意味では4回戦までとは違いました。

――ミスが出てしまった原因は?

 しっかり狙いたいという思いもあるのかもしれませんし、思ったよりもジョコビッチ選手のボールに合わないというか、気持ち良く打てていない感じかもしれません。やはり世界ランク1位を相手に、ラリーでしっかり押し切らないとというプレッシャーは常にあったと思います。でも今日はジョコビッチ選手もあんまり良くなく、アンフォーストエラーもしていたので、(錦織選手は)もう少しいつものようにやれていたら、もっと(ポイントが)取れている場面も多かったのではないでしょうか。本人が一番「いつもとは違う」と感じながらやっていたと思います。やはりプレッシャーが大きかったですね。特に第1セットはもったいなかったと思います。

――ジョコビッチ選手は出だしは良くないながらも勝ち切りました。錦織選手との差はどこにあるのでしょうか?

 ジョコビッチ選手は基本的に守備から入る方で、最初から高いリスクを負わないでプレーをします。なので、相手が先にミスをしてくれれば、自分は何もしなくてもポイントが取れる。ディフェンス能力が高いからそういうプレーができるのですが、今日の試合もリスクを負って何かをしようということは特にしていなかったと思います。自分のディフェンス能力をうまく使ってサービスをキープして、徐々にプレッシャーをかけていこうという試合の仕方でした。その前の試合(4回戦のジル・シモン戦)で少しミスが多かったので、そのあたりを意識して丁寧に入っていたのではないでしょうか。

 チャレンジャーとして攻める方と安定している方との違いはあったと思います。攻める方は(ボールが)入っている時は良いのですが、ミスをした時にはラリーで先にミスをさせられているというか、無理をして狙って(ミスをして)……となっていくと、ジョコビッチ選手にとっては楽になってくる。(ジョコビッチ選手はこの試合で)しっかりと守備から入ったのが功を奏したと思います。それでもそんなに良くなかったですね。

グランドスラム初Vの可能性は?

ジョコビッチ(右)は高い守備力を生かした戦略が功を奏したと森井氏は分析する 【写真:ロイター/アフロ】

――錦織選手が今後さらに上に勝ち上がるために必要なことは?

 技術的にはサービスも良くなってきていますし、4回戦までの試合は堂々たるトップ選手の試合ぶりだったと思います。1度ジョコビッチ選手には勝っていますし、今の技術が足りていないというわけではないんですけれど、勝負が懸かった時にいかにいつものプレーが出し切れるかという意味での経験値で言うと、ジョコビッチ選手は百戦錬磨ですから。こういった試合を経験して覚えていって、次につなげていってほしいですね。

――今シーズン、この後の錦織選手が取り組むべき課題は?

 いつも課題とされているサービスは改善されて、この大会ではかなり良くなってきています。プレーの仕方も全く悪くないので、あとはケガをしないこと。また、上位選手とやった時に自分のプレーがどれだけ通用するかという自信でしょうか。(今でも)自信はあると思いますが、(ゲームを)取り切れていないと、だんだん「ちょっとな……」と思ってしまいます。しっかり自信につなげていけば、今年は昨年以上に勝てるのではと思います。技術的なことよりも、しっかりと良いコンディションで向かっていければ、今年はすごく楽しみですね。

――今の調子だとグランドスラムの優勝も見えてきそうですか?

 可能性は十分あると思います。ただ、グランドスラムはドローの運もあります。今回もジョコビッチ選手とは準々決勝ではなく、もっと上に勝ち上がってからだったら……というのもあります。グランドスラムに関しては運も大きいですが、(準優勝した)一昨年の全米オープンのような活躍も十分期待できると思います。あれだけサービスが良くなると、弱点がどんどん減ってきているわけなので、すごく楽しみですよね。だからこそ、今回は力みが見えて、少しもったいなかったと思います。

プロフィール

森井大治(もりい・だいじ)
ジュニア時代から頭角を現し、同期の松岡修造らとともに海外遠征を経験。1990年からはプロとして活躍し、全日本ランキングは最高7位。97年の 引退後はユニバーシアード代表のコーチや監督を歴任。04年に早稲田大庭球部ヘッドコーチに就任し、翌05年から全日本大学対抗テニス王座決定試合で7連覇、女子は06年から6連覇を達成。現在、日本体育大テニス部の監督を務める。
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