三浦、壮絶な打ち合いの末にTKO負け それでも“未来”を感じさせた米国初戦
“ハリウッド映画”のような展開でファンを魅了
WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチは、壮絶な打ち合いの末、挑戦者バルガスが王者三浦にTKO勝利を果たした 【Getty Images】
現地時間11月21日、米国ラスベガスのマンダレイベイ・イベンツセンターで行われたWBC世界スーパーフェザー級タイトル戦は、指名挑戦者フランシスコ・バルガス(メキシコ)が、王者の三浦隆司(帝拳)に9ラウンド1分31秒TKO勝ち。メキシコ人挑戦者の前に屈し、5度目の防衛はならなかった三浦だが、その内容はまるで“ハリウッド映画”のようにスリリングで、ベガスのファンを魅了するに十分だった。
1ラウンドの開始早々、バルガスの右フックを受けて腰を落としかけた際には、三浦にとって厳しい展開になると思われた。そのままストップ負けを喫しても不思議ではないほど、ダメージは大きかった。しかし、このピンチを凌いだ三浦は、第4ラウンド終了間際に、左ストレートで逆転のダウンを奪う。
「4回にダウンを奪って、徐々に相手も弱ってきている感じがして、『いけるな』と思っていた。その一方で、バルガスが盛り返してきているのも感じていた」
試合後に三浦はそう振り返ったが、確かにバルガスも必死の抵抗を続けていたものの、流れは確実に王者に傾いているように思えた。
第8ラウンド終了間際にも左ストレートを決めて相手をダウン寸前に追い込み、序盤にカットしたバルガスの右目はもう閉じる寸前。この時点では、本場での豪快なノックアウト防衛は時間の問題に思えた。ところが……。
悔やむは第1ラウンドの被打
バルガスのラッシュに何とか立ち上がった三浦だったが、最後はレフェリーが試合を止めた 【Getty Images】
第1ラウンド、9ラウンドと狙い通りに大きな山を作った相手の勝負強さをまずは褒めるべきなのだろう。激闘を終えて、三浦本人、帝拳ジムの本田明彦会長は特に試合開始早々に浴びた右パンチを盛んに悔やんでいた。
タフな三浦も相当なダメージを受けていたようで、以降のボクシングの微妙な崩れにつながった。おかげでKOチャンスをつかんでも、仕留めるには至らなかった。途中で主導権を握ったように見えても、出鼻に負った傷がフィニッシュの瞬間まで尾を引いていたのだとすれば、23勝無敗(17KO)1分のまま初戴冠を果たしたバルガスのパワーは評価されてしかるべきだ。