三浦、壮絶な打ち合いの末にTKO負け それでも“未来”を感じさせた米国初戦
「今までのボクサー人生で最高の舞台」
約1万2000人の大観衆に見守られたリングは「今までのボクサー人生で最高の舞台」だったと語る 【Getty Images】
「本当に悔しいです。もうちょっとだった。気持ち的に前に行きすぎて、9ラウンドまで前に行きすぎて、技術面で負けた」「結果的にほんの一瞬の、油断はしていないけれども、ほんの隙を突かれた。勝負ごとなので仕方ない」
試合後の本人の言葉通り、勝敗はまさに紙一重だった。バルガスにも余力はなかったはずで、第9ラウンドは最後の力を振り絞っての猛反撃に見えた。あの回の序盤さえ無難にしのげば、もう銃弾は残っていなかったはずである。そんな状況を考えれば、余計に痛恨の1敗に思えてくる。
ただ……、米国のリングでは、勝敗同様、時にそれ以上に内容が問われることを考えれば、収穫も少なくない一戦だったとも言えるかもしれない。
「紛れもなく大きな舞台で、今までのボクサー人生で最高の舞台だった。気合いが入りました」
メインイベントではミゲール・コット(プエルトリコ)対サウル・アルバレス(メキシコ)という人気者対決が組まれていたがゆえ、約1万2000人を飲み込んだ大アリーナでの試合を、戦い終えた三浦はそう振り返った。その大舞台で、“ファンを喜ばせる”というプロボクサーとしての役目を果たしたことは紛れもない事実だった。
次の“挑戦”こそ正真正銘の大一番
米国初戦でインパクトを残した三浦。次の戦いこそ、正真正銘の大一番となるだろう 【Getty Images】
「勝つことが一番大事だが、こちらでやっていこうと思ったら、良い試合もしなければいけない。(マニー・)パッキャオはこういう試合を何度も勝ってきた」
本田会長もそう語り、惜しい負けを悔しがりつつ、観ているものを歓喜させる内容だったことは認めていた。実際に、特に8ラウンド終盤から9ラウンドの攻防は最高級のスペクタクルだっただけに、リマッチを切望する声は出てくるに違いない。三浦の強打、タフネス、勇敢さはHBOにとっても魅力のはず。バルガスとの再戦になるにせよ、他の選手相手になるにせよ、31歳の元王者には再びチャンスが訪れるのではないか。
米国リングを燃えさせる戦いの末に、次は勝利も手にできるように。6階級制覇を果たしたフィリピンの英雄、パッキャオの台頭期同様、今度は豪快なKOで難敵をフィニッシュできるように。未来への可能性を少なからず感じさせたという意味で、三浦の米国初登場は無駄ではなかった。
そして、遠からず迎える次の“挑戦”こそ――。再び内容も問われ、さらに今度はもう絶対に負けられない正真正銘の大一番になるはずである。