代表とクラブに共通するオランダの弱点 不用意な失点が招いたユーロ予選敗退
予選敗退もブリント監督は続投に意欲
ユーロ予選は4勝1分け5敗の4位に終わったオランダが、本大会の出場を逃した 【Getty Images】
16分間に渡った記者会見の最後、『デ・テレフラーフ』紙のバレンタイン・ドリーセン記者が、平坦な声で「この4試合を指揮し終え、それでもあなたは自分自身を代表チームの監督として適任と思っているか?」と尋ねた。
「私がやりたいと言ったのではなく、KNVB(オランダサッカー協会)が私に監督になってほしいとオファーを出したんだ。それに対し、私は熟慮し、自信を持って『やる』と答えた」
質問に答えていないブリントに対し、バレンタインは「だから、この4試合をやり終えてどう思っているかだ。あなたは成功しなかった」と畳み掛けた。
「全てが裏目に働いている時に、私は監督になった。状況が悪かった。さもなければ、私は違うやり方を採っていただろう」
ブリントとバレンタインの攻防は淡々とした口調のまま行われた。その凄みに僕はかすかに震えた。
誰も責任をとらないKNVB
監督人事に問題を抱えるKNVBだけに、ブリント監督(中央)の去就もどうなるか分からない 【写真:ロイター/アフロ】
「ヒディンクは、練習もミーティングも、ブリントにかなり裁量を与えて任せていた。最終責任者は監督のヒディンクにあったが、ブリントもアシスタントコーチとしての仕事をこなせていたとは思えない。ブリントが監督に昇格したのは間違いだった」
バレンタインは同意してから、「お前、月曜日の『アルへメーン・ダッハブラット』に載った『腹切り』のコラムを読んだか?」と尋ねてきた。それはフーゴ・ボルストという有名コラムニストが書いた「日本がオランダと同じ状況だったらトップは腹切りする。しかし、オランダは監督もKNVBの責任者も、誰も腹を切らない」というものだった。日本に対する事実誤認があるにせよ、ボルストのKNVBに対する苛立ちと皮肉がよく伝わってくるコラムだった。バレンタインは寂しげに言った。
「ここはオランダなんだ。誰も責任をとらないんだよ……。しかもKNVBにはテクニカル・ディレクターの職がないんだ!」
代表チームの監督人事を決めるのは、KNVBのゼネラル・ディレクター、ベルト・ファン・オーストフェーンだが、彼はあくまでアマチュアチームのGKだった過去があるだけで、そのバッググラウンドは企業人事のエキスパートである。なぜ(ハイレベルな)サッカーに精通した人物が監督人事に関わらないのか、そのことを正確に説明できる人物はオランダにいない。
日本では「ブリント監督、続投へ」という記事が載っているが、それが近い将来現地でどうなるか分からない。オランダの監督人事は、緊迫した情勢が続きそうだ。