代表とクラブに共通するオランダの弱点 不用意な失点が招いたユーロ予選敗退

中田徹

立ち上がりに失点を繰り返す悪い癖

予選では10試合中7試合で先制点を許すなど、立ち上がりの失点が多かった 【写真:ロイター/アフロ】

 しかし、ふと思う。今回のオランダ代表チームの低迷は、果たしてヒディンク、ブリント両監督だけの責任だけなのだろうかと。半分はイエスだろう。予選で同じグループに入ったアイスランドはかなりソリッドなチームを作ってきたが、チェコもトルコもかつての面影はなく、代表チームの建て直しにかなり苦労していた国だった。W杯で3位になったばかりのオランダにとって、本当ならかなり楽な組だった。

 ところが、オランダ代表チームの弱点と、クラブチームの弱点にはかなり共通点がある。今回の予選を振り返ってみると、オランダ代表は10試合のうち、7試合で先制ゴールを奪われている。本来なら、慎重に戦うべき立ち上がりの失点が非常に多かった。それも崩されてというより、セットプレーや、不用意なPK献上、ビルドアップの失敗など、つまらない失点が多かった。国際試合では許されないナイーブぶりである。

 同じような欠点をオランダリーグに所属するチームは持っている。それが如実に現れたのが今季のチャンピオンズリーグ(CL)・ヨーロッパリーグ(EL)のグループステージ第2節だった。CLに参加しているPSVは、CSKAモスクワ(ロシア)とアウェーで2−3という一見善戦に思える戦いをしたが、その実態は前半の内に3点を先制される苦しいものだった。EL組のアヤックスはモルデ(ノルウェー)相手に立ち上がり8分に失点し、何とか1−1で引き分け、フローニンゲンはブラガ(ポルトガル)に5分に決められたゴールを取り返せず、0−1で敗れてしまった。なぜ、オランダ代表も、クラブチームも、立ち上がりに失点するのだろうか。

 長身かつ足元の技術の高かったイタリア代表のグラツィアーノ・ペッレ(現サウサンプトン)を前線においたフェイエノールトは他チームよりロングボールを多用していたが、近年のオランダリーグは下位チームも含めてGKも使ったビルドアップを志向している。センターバックも守備力より、ビルドアップ能力が重視されている。

過去2回のW杯では守備の穴を隠していた

守備に課題を抱えるオランダ代表は戦い方を考える必要がある 【写真:ロイター/アフロ】

 国際試合で対戦する相手チームは、オランダ代表やクラブチームのやり方を熟知しており、ポゼッションさせておいてビルドアップのミスをついたり、4バックに対して4人でプレッシングをかけたり、攻めさせておいてロングボールで裏を狙ったりする。とりわけ、立ち上がりは体力もあってプレッシングをかけやすいから、オランダ勢のビルドアップを壊しやすい。

 また、オランダの守備陣は、ボールを失った後のことにあまり気を配ってないから、ミスから一気に攻めこまれてしまう欠点を持っている。サイドバックは安易にスライディングタックルしがちで、それが不用意なファウルとなって、相手にPKを与えてしまうこともある。こうした自滅による失点も、早い時間帯に多かった。

 ベルト・ファン・マルワイク監督は、マルク・ファン・ボメルとナイジェル・デ・ヨンという2枚の守備的MFを置いた上、さらにFWのタレントたちにもハードワークを課して10年W杯で準優勝した。ルイ・ファン・ハール監督は5バックで守備を固めてアリエン・ロッベンのスピードが生きるフォーメーションを採用した。近年、オランダがW杯で好成績を残した時は、守備の弱点をうまくカモフラージュすることに成功していたのである。

 クラブチームの守備力が改善されないかぎり、代表チームは多少なりともオランダらしさが欠けるサッカーをしないといけないのかなと、残念ながら思っている。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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