関塚監督が目指すジェフ千葉の形 プレーオフで勝てるチームとなるために

西部謙司

スタイル変更で好調だった序盤

関塚監督(左)が共にロンドン五輪を戦ったスタッフで固めた今季だが、残り8試合となった現在は8位に沈んでいる 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 開幕から7戦無敗、関塚隆監督が、共にロンドン五輪を戦ってベスト4を射止めたスタッフで固めた今季、J1自動昇格の期待も高まっていた。「今季のジェフは強い」と多くの人が思っただろう。しかし、残り8試合となった現在、J2リーグ8位に沈んでいる。

 今季のジェフ千葉は戦い方を変えている。それが序盤好調の原因であるとともに、その後の失速の要因でもある。

 簡単に言えば、ポゼッション型から堅守速攻型に変わった。守備の重鎮だった山口智が移籍し、センターバック(CB)のコンビは大岩一貴とキム・ヒョヌンに。この二人はパワフルでスピードもあり、はね返す力は強いが、ビルドアップに秀でたタイプではない。後方からショートパスをつないで攻め込むのは難しかった。また、従来のポゼッション志向の攻撃は対戦相手のカウンターの前に不覚をとることも少なくなかった。

 そこで今季はDFからのロングボールを多用し、全体を押し上げることでボールを失っても高い位置からプレスをかけてリズムをつかむ戦法を柱とした。パウリーニョのボール奪取力がその戦法の中で生きていた。

 いわゆる「縦に速い攻撃」は最近の流行のようだが、スタイルを変えれば問題が解決するわけではない。違うスタイルには違う問題が生じる。ターニングポイントになったのが初黒星を喫した第8節の愛媛FC戦(0−1)だ。愛媛は千葉の持つ2つのストロングポイントを封じた。パウリーニョのプレスを外すことと、左サイドバック中村太亮の攻撃力を削ぐことだ。特に前掛かりにプレスしてくるパウリーニョを回避されると、ロングボール+ハイプレスでリズムをつかめなくなったばかりか、中盤のスペースが広がってカウンターの危険が大きくなった。パウリーニョの奪取力は諸刃の剣であり、相手がそこに気づき始めたのがこの試合だった。

補強効果と微修正

森本(中央)が負傷した影響もあり、2トップよりも1トップが基本だった今季の千葉 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 そもそも堅守速攻のサッカーには大きな落とし穴がある。同点かリードしているときは有効だが、逆転のシナリオがない。速く攻めれば速くボールを失う。自陣で奪ったボールを蹴り返しているばかりでは、すぐに相手のボールとなり、リードしている相手はパスを回して時間を使う。点を取りたいのにボールがない時間が長くなってしまう。陣形は間延びしやすくなり、相手のカウンターへの守備力も弱くなる。

 関塚監督はポゼッションを否定しているわけではない。試合の入り方としてロングボールを強調したが、そればかりでうまくいかない試合があるのは自明である。富澤清太郎を獲得してCBに据え、ビルドアップの改善を図った。FWに安柄俊を獲り、さらに松田力も獲得。人数は十分そろっていたFWを矢継ぎ早に補強したのは、1トップから2トップへ舵を切るためだ。

 森本貴幸が負傷したこともあり、それまでは2トップよりも1トップが基本だった。トップ下には町田也真人が起用されていた。しかし、小柄な技巧派である町田はロングボールの落下点で戦わせるには明らかに不向きである。FW補強後は森本+松田の2トップが定番となりトップ下のポジションそのものがなくなった。

 補強策によって、弱点だったビルドアップのテコ入れ、戦術の軸としていた縦へのロングボールの有効活用、この2つが改善されるはずだった。実際、富澤加入でビルドアップは安定感を増し、松田はすぐにチームの得点源となるほどの実力を示した。しかし、戦術の整合性はとれたようでいて、依然として足りないところがあった。

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著者プロフィール

1962年9月27日、東京都出身。サッカー専門誌記者を経て2002年よりフリーランス。近著は『フットボール代表 プレースタイル図鑑』(カンゼン) 『Jリーグ新戦術レポート2022』(ELGOLAZO BOOKS)。タグマにてWEBマガジン『犬の生活SUPER』を展開中

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