関塚監督が目指すジェフ千葉の形 プレーオフで勝てるチームとなるために

西部謙司

勝負強いチームへのハードル

勝負強いチームになれる条件はそろっているだけに、6位以内に滑り込んでプレーオフに出られれば昇格の可能性は高まるはずだ 【写真:アフロスポーツ】

 関塚監督が目指しているのは「勝負強い」チームなのだと思う。相手を圧倒して大差で勝つという高望みはせず、僅差で勝つチームを指向している。

 カウンターとカウンターに対する守備、ポゼッションとポゼッションに対する守備。サッカーを主に4つの局面に分けるとして、どれかに特化して一方的なゲーム展開へ持っていこうというやり方ではない。例えばバルセロナやバイエルン・ミュンヘンはポゼッションと被カウンター守備の組み合わせがゲームの基調となり、2局面の強さで相手を圧倒してしまうが、そうではなくて、それぞれの強さはそこそこでも4局面を使い分けることで僅差勝ちを狙うわけだ。

 ところが、現実には先制点を取っても追加点が取れないうちに追いつかれる、攻勢をとっても相手に逃げ切られるなど、むしろ「勝負弱さ」が目立ってしまっている。

 ただ、これも当然といえば当然で、僅差で勝とうとすれば僅差で負けるリスクは高くなるのだ。僅差勝ちと負けの分岐点になるのは被ポゼッション時の守備力である。

 カウンターアタックに関して、千葉はかなりうまい方だ。ポゼッションからの崩しはいまひとつだが、相手が引いた状態で攻め続ければ1点ぐらい取る力はある。被カウンターの守備はパウリーニョの諸刃の剣問題はあるものの弱くはない。課題は被ポゼッションの守備で、必ずゼロで抑えられるような安定感がないのだ。堅守速攻の堅守の方が成立していない。そのために1点差では安心できず、2点差が必要なチームになっているのだが、そもそも2点差勝ちできるような設計になっていないわけだ。

 引いて守るときの奪いどころがはっきりしていない。ゾーンは埋めているが奪い切れない。縦方向にコンパクトにはなっているが、横方向の圧縮がないので圧力が足らない。僅差勝ちの勝負強いチームを作るなら、最初にやっておくべきことが、この期に及んでまだできていないと言える。良い内容のプレーをしていながら勝ち切れないのは、肝心要の部分が終始不安定だからだ。逆に、そこさえキマれば本当に勝負強いチームになれる条件はそろっている。

 すでに自動昇格は不可能と言っていいと思うが、6位以内に滑り込んでプレーオフに出られれば昇格の可能性はそれなりに残る。そのときまでに目標である勝負強いチームが完成していれば、非常にプレーオフ向きのチームになっているはずだ。

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著者プロフィール

1962年9月27日、東京都出身。サッカー専門誌記者を経て2002年よりフリーランス。近著は『フットボール代表 プレースタイル図鑑』(カンゼン) 『Jリーグ新戦術レポート2022』(ELGOLAZO BOOKS)。タグマにてWEBマガジン『犬の生活SUPER』を展開中

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