バスケ新リーグへの試金石となった2試合 「DREAM GAMES」で見えたこと

舟山緑

夢の対戦はNBLの2勝に終わる

NBLとbjリーグの優勝・準優勝チーム同士の注目の対戦「DREAM GAMES」は、NBL勢の2勝に終わった 【松岡健三郎】

 9月13日、大田区総合体育館で行われた「リサイクルショップベクトルpresents NBL×TKbjリーグDREAM GAMES」。ナショナル・バスケットボール・リーグ(NBL)、ターキッシュエアラインズbjリーグ(bjリーグ)の2014−15シーズンの優勝・準優勝チーム同士の注目の激突は、リーグのプライドと期待を背負っての対決となった。試合は、トヨタ自動車アルバルク東京(NBL)が秋田ノーザンハピネッツ(bjリーグ)に98−66で大勝。またアイシンシーホース三河(NBL)と浜松・東三河フェニックス(bjリーグ)の頂上決戦は、アイシンが83−73で浜松を突き放し、NBLチームが共に勝利した。

 両リーグの交流戦は、この数年、公式あるいは練習試合など増えてきていた。だが、今回の「DREAM GAMES」が歴史的なのは、日本バスケットボール協会(JBA)の主導で開催されたことだ。1年後の2016年秋には、新リーグがスタートする。対戦した4チームは、共に1部リーグで戦うチームだ。新リーグの試金石ともなった「DREAM GAMES」から見えてきたことは何か、探ってみたい。

頂上決戦は、アイシンが勝利

 昨シーズンのNBL王者・アイシンvs.bjリーグ王者・浜松の対戦は、序盤から一進一退。まさに意地をかけた拮抗した一戦となった。前半は浜松が大石慎之介、並里祐、田渡修人らが速い展開から3ポイントを沈め、岡田慎吾がブレークに走って波に乗った。特に第2クォーター半ばに170センチの並里が、高さで上回るアイシンのディフェンスを翻弄(ほんろう)して連続3ポイントを決めた場面は、見事な小気味良さだった。この並里の3連発で、浜松が前半を41−36で終えた。

 5点差を追うアイシンが逆転したのは第3クォーター半ば。攻撃の要・桜木ジェイアールがローポストで老練なうまさを見せてチームをけん引。新加入のアイザック・バッツがディフェンス・リバウンドを支配すれば、交代して入ったギャビン・エドワーズもしつこいゴール下プレーで得点にからみ、アイシンが次第に主導権をにぎっていく。第4クォーターもエドワーズのゴール下プレーが爆発するなど、“歴史的な頂上決戦”はアイシンが83−73で勝利した。

「浜松は非常に3ポイントがうまいチーム。昨年の練習ゲームでも何本も決められている。今日も前半はヒヤヒヤだったが、後半はヘルプに行き過ぎずに自分のマークマンをしっかり守ることを指示。そこがうまくいきわれわれのバスケットができた」と、勝因を語ったアイシンの鈴木貴美一ヘッドコーチ(HC)。

 エドワーズ25点、バッツ13得点、比江島慎は20得点。ヒジ痛で調子がイマイチだったエース金丸晃輔も、要所で3ポイントを沈めて意地を見せた。比江島は「NBL王者としてのプライド、またNBL代表として『絶対に勝たなくては』というプライドもあり、みんなが勝ちにこだわって戦った」と話す。大差で勝つのではなく、「負けないバスケ」を得意とするアイシン。その勝負強さがこの頂上決戦でも光っていた。

「細かいことの積み重ねの差」と浜松・東野HC

敗れた浜松・東野智弥HCは「アイシンとの差は細かな部分の積み重ね」と反省を口にした 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ/bj-league】

 一方、14本の3ポイントを沈めながら敗れた浜松・東野智弥HCは「並里がミスをして、アンスポーツマンライク・ファウルを取られてしまった。あそこが1つの勝負どころだった」と振り返る。第4クォーターが始まってすぐに、並里のボールをアイシンの橋本竜馬がスティール。ミスを取り返そうとした並里のプレーが、手痛いファウルになった場面だ。このあと浜松はファウルがかさみ、シュートも決め切れなかった。最終クォーターで守りを厳しくし、アディソン・スプルールが気を吐いたが、アイシンの守りの前に単発な攻めに終わってしまったのが悔やまれる。

 日本代表でもあるセンターの太田敦也(206センチ、112キロ)は、「bjリーグでも外国籍選手と戦ってきたが、まだまだ足りないと感じた。後半、相手のインサイドに押し切られてしまった。正直、僕の力不足。悔しい」とゲームを振り返った。マッチアップしたアイシンのバッツは208センチ、133キロの堂々の体躯。「bjリーグにも重い選手はいるが、あれだけ高さとパワーがあってガンガンやってくる選手はいない。正直、きつかった」と、悔しさをにじませた。

 東野HCは「アイシンはインサイドが身上だけに、そこが痛かった。金丸選手はある程度は抑えたが、比江島選手にやられてしまった。アイシンとの差は細かな部分の積み重ね。勝負どころで流れを読めないようでは勝てない」と、反省点を挙げた。敗れたとはいえ、終始、ベンチ前で選手を鼓舞し続ける東野HCの姿には、指揮官としての熱い情熱がほとばしっていた。

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著者プロフィール

月刊バスケットボールで12年にわたりミニバスから中学、高校、大学、トップリーグ、日本代表まで幅広く取材。その後、フリーランスとなる。現在はWEBを中心にバスケットの取材・執筆を続けている。ほかに教育分野での企画・編集なども手がけている

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