エディージャパンはW杯で勝てるのか 3連敗で生まれた「不安」

斉藤健仁

ワールドカップの前哨戦で3連敗

アメリカ、フィジー、トンガに3連敗した日本代表。ジョーンズHCは「課題点が浮き彫りになった」 【斉藤健仁】

 9月19日にラグビーワールドカップ(W杯)の初戦(南アフリカ代表戦)を控えたラグビー日本代表が6日、北米で行われていたパシフィック・ネーションズカップ(PNC)から帰国した。W杯の前哨戦となる大会で、カナダ代表にこそ勝利(20対6)したが、メンバーを大きく代えて臨んだアメリカ代表戦(18対23)、フィジー代表戦(22対27)、3位決定戦のトンガ代表戦(20対31)と3連敗。6カ国中4位で大会を終えた。

 日本代表は、2014年度はテストマッチ(国代表同士の試合)で11連勝を達成、世界ランキングを9位に上げるなど好調だった(現在は14位)。6月には24日間の「過酷な訓練」を敢行、FLリーチ マイケル主将(東芝)、SH田中史朗(パナソニック)ら「スーパーラグビー組」が戻ってきた期待感もあった。だが勝てそうで勝てなかった。日本代表を率いるエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)は1年前から「すべての試合はW杯のための準備」と繰り返してきたが、PNCは「課題点が浮き彫りになった」とも振り返った。

 ジョーンズHCが就任した2012年以来、テストマッチ3連敗は3度目だが、W杯まであと50日を切った中での連敗に、不安も感じたファンも多かったはずだ。残りは国内で3試合と、現地でジョージア(旧名グルジア)代表戦と計4試合となった今、W杯で24年ぶりの白星にとどまらず「ベスト8進出」を目標とする「エディージャパン」はどうW杯に挑むべきか――。

良かった点は「セットプレー」

強化を進めているスクラムは日本代表の武器となっている 【斉藤健仁】

 まずPNCで良かった点はスクラムとラインアウトのFWのセットプレーだ。PNC6トライ中5トライの起点ともなった。就任当初からジョーンズHCは、世界と互角に戦うためには「セットプレーの成功率は9割必要」と言い、強化し続けてきた。「セットプレーは進歩している。ゲームの中心となる2つのプレーです。(PNCでは)PR山下(裕史)、畠山(健介)は良い仕事をした。ラインアウトもトンガ代表戦以外は良かった」(ジョーンズHC)

 それでも、W杯を想定すると初戦の南アフリカ代表、2戦目のスコットランド代表はセットプレーが強く、3戦目に戦うサモア代表のスクラムも重い。昨秋はジョージア代表に歯が立たなかったように、本番で優位に立つ保証はない。そのことは指揮官も十分承知だ。そのため8月25日にはウルグアイ代表と、大会直前には現地のクラブチームとスクラム練習を行い、9月5日にセットプレーの強いジョージア代表と再戦する。「スクラムで反則して、(ゴール前)ラインアウトからモールという状況を回避したい」(ジョーンズHC)

ディフェンスには課題も

体の大きな外国勢に対して、激しいディフェンスを80分間続けることが求められる 【斉藤健仁】

 また4試合で失トライは7つとPNCを通して組織ディフェンスは悪くなかった。なるべく早くセットし、早く上がって相手からスペースと時間を奪うスタイルだ。またWTB福岡堅樹(筑波大4年)が、スマザータックル(相手の上半身にタックルし、勢いを利用し引き倒す)を決めたシーンもあった。「1対1のタックルを外したことはありますが、ディフェンスの形は良くなってきている」(ジョーンズHC)。中盤ではダブルタックルで相手を止めて、ゴール前では粘りも出てきた。

 ただ、相手のボールを奪うまでの精度はなく、状況によって、ボールを外まで展開させるのを防ぐため、CTBなどラインの中盤の選手が上がる「アンブレラディフェンス」も必要だろう。ジョーンズHCも「フィジカルが強く体重の多いチームに苦戦している。(ディフェンスラインの)スピードを上げて、(1人目が)良いタックルに入って、2人目が必死にコンタクトする。それを80分、継続して行わないといけない」と苦言を呈することも忘れなかった。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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