リーチ主将が語る日本代表への思い 「日本はラグビーで僕を育ててくれた」

斉藤健仁

NZの強豪で主軸として活躍

日本代表の主将としてチームを引っ張るリーチ マイケル(右) 【斉藤健仁】

「エディー・ジャパン」に頼もしい男が帰ってきた。

 9月からイングランドで開催されるワールドカップ(W杯)を控えるラグビー日本代表は、北米でパシフィック・ネーションズカップ(PNC)を戦っており、7月29日、カナダ・トロントでフィジー代表と相まみえた。

 試合は残念ながら22対27で惜敗したが、「7」を背負い、昨年の11月以来、今シーズン初先発となったのが2年前から「エディー・ジャパン」のスキッパーを務めるFLリーチ マイケル(東芝)だった。プレーの強度は上がり、ほかの選手たちに積極的に声をかけるリーチは、より一層たくましく見えた。

 リーチは今シーズン、スーパーラグビーで優勝2回を誇るニュージーランド(NZ)のチーフスでNo.8として奮闘。プレーオフ準決勝で敗退したが、14試合(12試合先発)に出場し、3トライを挙げるなど主軸として活躍した。「スーパーラグビーを経験し、ゲームに対して深く考えるようになりました。勝敗を分けるのはどこなのか、理解度が上がりました」(エディー・ジョーンズ日本代表HC)

 ジョーンズHCにリーチは「キャプテンだけど日本代表のことは考えてなくていい」と言っていた。実は、決意の2度目のスーパーラグビー挑戦だった。日本代表であるSH田中史朗、HO堀江翔太(ともにパナソニック)らがスーパーラグビーデビューを果たした2013年、リーチはチーフスと契約できたが、度重なるケガの影響もあり、試合に出場することはかなわなかった。

目標は「オールブラックスに肩を並べること」

スーパーラグビーでは14試合に出場し、3トライを奪う活躍を見せた 【斉藤健仁】

 2015年3月、日本のシーズンが終わるとすぐにNZに渡った。「合流してすぐ『最初の練習で印象を残したら、次の週の試合でリザーブに入れる』とコーチに言われて、頑張りました」。3月14日、アウェイのストーマーズ(南アフリカ)戦で念願のデビューを果たした。「自分でも思ったより早く試合に出られました! ラインアウトが一番評価されましたね」と振り返った。

 大学の同級生と結婚し、2013年に日本国籍を取得した。それでもNZ出身、5歳からラグビーを始めたリーチにとっては、スーパーラグビーは「夢の舞台」だった。憧れの選手は、6月に交通事故で亡くなった元オールブラックスのFLジェリー・コリンズだった。ラグビー選手として「もうなることはできませんが、オールブラックスの選手に肩を並べること」を目標に掲げていた。

 昨年11月の日本代表がマオリ・オールブラックス戦後と戦った後、ジョーンズHCに「接点でうまくプレーできないとスーパーラグビーでは戦えない」と指摘を受けた。そこから接点の練習をより意識し、チーフスに行ってからも、コーチのアドバイスを聞き、チームメイトのオールブラックスらと一緒に研鑽を積んだ。その努力の成果が、今季のスーパーラグビーでの結果につながった、というわけだ。

府中市にNZスタイルのカフェをオープン

カフェをオープンするためにバリスタの先生の下で修行も積んだ 【写真提供:Cafe+64】

 スーパーラグビーには2016年から日本代表に準じるチームが参加するが、リーチは来季も、チーフスと契約。3試合目くらいでオファーが届いたという。日本代表のキャプテンでもあったリーチは「難しい判断でした」と顔をしかめて、こう続けた。「チーフスからの評価はだいぶ上がりましたし、優勝を狙えるチームです。また一度抜けたら戻ることが難しい。少しセルフィッシュ(自分本位)な判断だったかもしれないですが、スポンジのように周りの選手やコーチから吸収したい」

 2017年は「どうなるかわからない」と言うものの、リーチはW杯が終わったら、再び日本とNZの両国でプレーする選択した。日本国籍を取得してもNZは「母国」であり、高校からプレーし続ける日本へ思いも強い。両国でプレーするのは自然な流れだったのかもしれない。

 それを証明するかのように、現役日本代表選手としては異例だが、リーチは7月に東京都府中市美好町にNZスタイルのカフェ「Cafe+64」をオープンさせた。店名の「+64」はNZの国際電話の番号にちなんだ。「コーヒーが好きだったし、ずっとカフェをやりたくて勉強をしていた」。コーヒー豆は、NZで焙煎したものを輸入し、バリスタの先生の下で修行も積んだ。2号店は高校(札幌山の手)時代を過ごした北海道で開く予定だという。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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