大器の片鱗見せた池江と持田 若き才能たちの世界水泳デビュー戦

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重要度が高い大会1本目

世界水泳デビュー戦となる女子200メートル自由形を泳ぎ終えた高校1年の持田早智 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 ロシア・カザンで行われている水泳の世界選手権は競泳の3日目まで終了した。日本代表はここまでリレーメンバーの江原騎士(山梨学院大)、青木智美(ATSC.YW)を除く23選手がレースに参加しており、それぞれが課題や収穫をつかんでいる。

 瀬戸大也(JSS毛呂山)を指導する梅原孝之コーチは「本人の性格上、最初が大事」と語っており、瀬戸自身も大会前から1本目の重要性を度々口にしていた。

 瀬戸の今大会1本目は、4日に行われた男子200メートルバタフライ予選。1分55秒60の全体3位で準決勝進出を決めると、「昨日も興奮して眠れなかったけれど、いい出だしが切れた」と、上々の滑り出しに笑顔がこぼれた。

 ほかの選手たちにとっても、大会の1本目は大きな緊張感が伴い、その後の流れを左右する重要な要素となる。特に、初の世界選手権出場となった中学3年の池江璃花子(ルネサンス亀戸)と高校1年の持田早智(ルネサンス幕張)にとって、1本目は大きな意味を持っていた。

池江の強気な姿勢は変わらず

女子4×100メートルリレーの第2泳者として出場した池江(右)。積極的に前半から仕掛けるレースを見せた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 中学生として14年ぶりの代表選出となった池江は、競泳初日となる2日に、女子4×100メートルフリーリレーの第2泳者として登場。第1泳者の内田美希(東洋大)から引き継ぐと54秒63の好記録で役目を果たした。

 最終的に日本チームは9位に終わり、決勝進出はならなかったものの、上位12位までに与えられる2016年リオデジャネイロ五輪の出場枠をつかむことができた。

 タイムについては「いまいち」と、本人は納得していないものの、自身の特長である前半から積極的に仕掛け、スピードを生かすレース展開は遂行できた。となりのレーンを泳ぐ地元ロシアの選手に大声援が送られる中、「ロシアには負けたくない気持ちがあった」と、物怖じしない強気な姿勢は世界の舞台でも変わらなかった。

 1本目から、五輪出場権の懸かる重要なレースをこなした池江は、自身の泳ぎをこう振り返る。
「レース前は緊張していたのですが、スタート台に立ったときに山口(美咲/イトマン)さん、松本(弥生/ミキハウス)さんが声をかけてくれました。私が頑張らないと次につながらないと思ったし、しっかり自分のレースはできたと思います」

 池江は4月の日本選手権初日、得意の100メートルバタフライで予選敗退を喫するなど、これまで大会への入り方に何度も失敗していた。だからこそ、今大会で見せた泳ぎは確かな成長の証と言えるだろう。

リラックスして持田流を貫く

 一方、初日のレースを観戦し、「緊張したけれど、この舞台で早く泳ぎたい気持ちが上だった」と話した持田。その1本目は、競泳3日目に行われた女子200メートル自由形となった。

 結果は1分59秒35の全体20位で予選落ち。悔しいデビュー戦となったものの、リラックスして競技に臨むことはできた。レース前には「外国人選手って意外と(直前でも)集中しないでペラペラとしゃべるんだなと思った」と、周囲の状況を確認できるほど余裕を持つことができ、持田流のレース展開が揺らぐこともなかった。

「自分は前半からいって、後半どこまでもつかというスタイルでやってきています。海外でもそこはぶらさずに、しっかりと自分のレースが出せたと思います」

失わなかったそれぞれの持ち味

池江(写真)と持田は、4×200メートルフリーリレーにともに出場する。次のレースではどんな泳ぎを見せるか? 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 池江と持田のコメントに共通しているのが、「自分のレースができた」ということ。親友であり、ライバルでもある2人の若き才能は、国際舞台でも、それぞれの持ち味を失わなかった。

 今大会で2人の本命種目となるのが、6日に行われる4×200メートルフリーリレーだ。こちらも、上位12位までに入ることができれば、リオ五輪の出場権が与えられる。再び迎える重圧のかかる場面を、2人はどう乗り越えるのか。そして、乗り越えた先にどんな成長した姿を見せてくれるのだろうか。

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)
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