ハリルホジッチへの逆風の予感 日々是東亜杯2015(8月2日@武漢)

宇都宮徹壱

ハリルホジッチの批判がはらむリスク

女子に続いて男子も日本を破ったことで、北朝鮮は今大会の注目の的となっている 【宇都宮徹壱】

 今回の東アジアカップの位置付けが、国内組の選手たちの見極めであり、決して結果だけが重視されるものでないことはもちろん承知している。しかしながら、昨日の女子に続いて2日連続で北朝鮮に敗れるというのは、やはり精神的に厳しいものがある。ちなみに日本が北朝鮮に敗れたのは、アルベルト・ザッケローニ体制時代の2011年11月15日以来のこと。この敗戦で16試合続いた無敗記録は途切れたわけだが、すでにW杯の最終予選進出を決めていたこと、そして敵地ピョンヤンでの試合だったことを思えば、それほど悲観するべきものでもなかった。それに比べて今回の敗戦は、より重く受け止めるべき内容だったと思う。

 敗因は何だったのか。まずは選手たちのコメントから探ってみたい。西川は「良い入りができて、そのあともチャンスがあった。2点目、3点目が入っていれば、そこで試合は決まっていた」と追加点がなかったことを指摘。また失点に関しては、セカンドボールを奪われて相手にロングボールを放り込まれたことを挙げる選手が多かった。武藤は「セカンドボールを取れなかったのが(失点した)一番の要因。もう少し前の選手が下がってセカンドボールを取ってあげないと」と反省すれば、遠藤も「途中で20番(パク・ヒョンイル)が入ってきてからは、割り切って全部長いボールを入れてくるようになった。単純にああいう強さのある選手の守り方に課題があった」と悔やんでいた。

 では、指揮官の考えはどうか。会見でハリルホジッチは、何度も「がっかりしている」と繰り返した上で、日程的に厳しい条件だったことを指摘。「何人かの選手はかなり疲労しているし、けがもあるのでおそらく(次の韓国戦では)プレーできない。日本のフットボール界の責任ある方々は、今日何が起こったかをしっかり見てほしい」とまで語っている。おそらく、中国に入る前日(7月29日)までリーグ戦が行われ、その結果として直前になって負傷した選手を入れ替えなければならなかったことを指摘しているのだろう。心情的には理解できる。しかし一方で、コンディションが整っていない選手やけが明けの選手をあえて選出した点については、指揮官の側にも非がないわけではないだろう。

 東アジアカップという大会は、各国の国内リーグの底力が試される大会だと個人的には考える。欧州組が参加できない縛りがある中、普段からいかにリーグで選手を鍛え、コンディションの良い状態で大会に送り出すことができるか──。それが如実に結果に表れるのが、この大会の面白さであり怖さだと思う。その意味で言えば、今回の敗戦を受けて指揮官がJリーグの現状(とりわけ日程の問題や激しさの欠如)に対して疑義を言いたくなるのも分からないではない。とはいえ、この会見での発言が、Jリーグへの責任転嫁ととられるリスクについては、もう少し配慮が必要だったのではないか。先に述べたとおり、当地ではSNSが見られないので、日本のファンの反応はつかめていない。が、今回の結果と会見での発言が、ハリルホジッチに対してかつてない逆風となる可能性は十分に感じている。

<翌日につづく>

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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