瀬戸大也とともに、再び世界の頂点へ 担当コーチも称賛する勝負強さの源泉

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最大の挫折と萩野という存在

キャリア最大の挫折は12年ロンドン五輪の代表選考会。3位に終わり出場を逃した 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 2人のライバル関係において、忘れてはならないのが12年ロンドン五輪の代表選考会だ。萩野は200メートル、400メートルともに優勝して代表入り。一方の瀬戸は、2種目とも派遣標準記録を切りながら3位に終わり、五輪出場を逃した。キャリア最大の挫折を味わった瀬戸が立ち直るきっかけとなったのは、萩野がロンドンで400メートル個人メドレーの銅メダルを獲得したことだった。

「今思えば私自身もショックを受けていたし、私の声はあまり届いていないだろうなと思いました。最終的には萩野の活躍を見て、落ち込んでいる場合ではないと。逆に銅メダルを取る人に負けたのだから、自分にもチャンスがあるという気持ちになったんだと思います」

 それから3年が経過した。2人はさらに成長を遂げ、世界最高峰のレベルで競い合っている。梅原コーチは萩野の練習量を引き合いに出し、瀬戸に発破を掛けることもあるという。「常に意識していますし、私もそうです。彼がいなかったらここまで来ていないし、意識しなければお互いに速くならないと思います」という言葉からは、萩野という身近なライバルの存在が瀬戸にとっていかに重要なのかを物語っていた。

メンタルの強さを武器に、五輪内定へ

大舞台になるほど勝負強さを発揮する瀬戸。再び頂点に立ち、五輪内定をつかめるか 【写真:ロイター/アフロ】

 瀬戸はこれまでも、大舞台になればなるほど実力を発揮してきた。国内の試合では萩野の後塵を拝することもあるが、前述のバルセロナで行われた世界選手権や、14年の世界短水路選手権400メートルで優勝を果たすなど、世界の舞台で頂点に立っている。一方の萩野は、長水路では銀メダルが最高で金メダルはまだ獲得したことがない。

 梅原コーチが「どれも一流」と評する泳ぎの技術もさることながら、瀬戸の一番の武器は大舞台で力を発揮できる勝負強さなのだという。舞台が大きくなれば、緊張した様子を見せることもある。ただ、瀬戸の場合はそれ以上に勝負を楽しむことができる。決して物怖じすることはない。

 カザン世界選手権での目標は、個人で出場する200メートルバタフライ、200メートル・400メートル個人メドレーという3種目のうち、1つでも金メダルを獲得すること。頂点に立てば、リオデジャネイロ五輪代表の内定を勝ち取ることができる。五輪に出場したことがない瀬戸にとって、「この段階で内定を勝ち取ることは大きなアドバンテージ。気持ち的にもだいぶ楽になる」と梅原コーチは考えている。

 前回王者として挑む瀬戸は、再び金メダルをつかむことができるか。元来のポジティブさと大舞台になるほど発揮する勝負強さが魅力の男は、2人3脚で歩む梅原コーチの指導の下、カザンで再び大偉業を成し遂げるかもしれない。

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)

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